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自律型組織を考える(2)「ホラクラシー組織」

自律型組織を考える(2)「ホラクラシー組織」

ホラクラシー(holacracy)とは役員、部長、課長などの階級や役職がなく、上司・部下といった上下関係もない組織体制のことを指します。従来のヒエラルキー型組織と相反する新しい経営手法として注目されており、生産性の向上やストレスの軽減ほかさまざまなメリットが指摘されています。本記事では、ホラクラシー組織が登場してきた背景、具体的なメリット・デメリットを解説します。

ホラクラシー組織の特徴とは?

ホラクラシー組織とは、日本に従来から根づいている「中央集権型・階層型」のヒエラルキー組織に対して、「分散型・非階層型の組織」とも呼ばれます。組織の決定権は一部の上級管理職ではなく、社員が所属するグループに委ねられます。

社員全員に「役割」が与えられグループ内で個々が意思決定を行います。経営に対しても社員全員が発言権をもち、評価や査定も社員全員で実施するケースが多く見られます。

ホラクラシー組織が導入された背景

ホラクラシーは、2007年に米国のIT企業創業者、ブライアン・ロバートソン氏によって提唱されました。背景には世界のグローバル化、デジタル化があります。一部の管理職のみが重要情報を持ち意志決定するヒエラルキー型組織では、市場環境の変化の速さに対応しきれない課題があり、その解決のために創出されたと言われています。

ロバートソン氏の執筆した『HOLACRACY(ホラクラシー)』には、ホラクラシー組織は「55分で33議題の処理をも可能にするプロセスである」とあり、非常に効率的であることがうかがえます。

米国のネット通販企業ザッポスをはじめ世界で数百社が導入しているほか、日本でも不動産テックベンダーのダイヤモンドメディア、民泊情報サイトAirbnbなどが導入し注目を浴びています。

・ホラクラシー組織とティール組織の違い

ホラクラシー組織は「ティール組織」とよく混同されます。ティール組織とは「組織に関わるすべての人のために組織がある」という考えに基づき個々のメンバーが自律的に組織の目的に応じて行動する組織形態です。

ティール組織が広義の、ある意味では抽象的な「概念」であるのに対して、ホラクラシー組織は一つの明確な「ビジネスモデル」を提示しているところが違っており、わかりやすく言うとティール組織を構築する形態の一種として、ホラクラシー組織があると言えます。

・ホラクラシーの解釈の注意点

ホラクラシー組織はしばしば誤解されますが、社員とグループは会社組織というグループに属するため、必ずしも「フラットな組織」ではなく、グループごとにファシリテーターをたてて進行するなど状況に応じて管理体制もつくるため「管理者がいない」ことにもあてはまりません。

上下関係がないかわりに「ホラクラシー憲法」というルールがあり、グループ運営の仕組みや意思決定のプロセスは規定されています。

ホラクラシー組織のメリット

ホラクラシー組織のメリットには以下の点があります。

・生産性・自律性の向上
意思決定スピードが早くなることで生産性向上につながります。また、社員の役割が明確かつ裁量権があるため自律性につながり、また業務に集中しやすいためモチベーションが上がることも期待できます。

・多様なアイデアの創出
個々の意見が尊重されるため多様な意見が集まり、コミュニケーションも活発になるため新しいアイデアが生まれやすくなります 。

・ストレス軽減
上下関係がなくなり、また個々やチームの目的や情報がオープンになるため、理不尽な要求・パワハラ・社内政治などが生じづらくなり、社員がリラックスして役割に集中できます。

ホラクラシー組織のデメリット・注意点

デメリットと注意点としては以下が挙げられます。

・導入・実施コスト
ヒエラルキー型組織は長く社会的に浸透しているため、企業にホラクラシーの考え方や意義を浸透させるには相応の時間を要するでしょう。

・組織管理がしにくい
ホラクラシー組織にはグループのリーダーは存在しないため、組織全体を統括してコントロールすることが難しい面があります。

・リスク管理に注意を要する
個々の社員が意思決定の権限をもつため、何人もの承認を得るプロセスがない代わりに、リスク判断についても個々の裁量に委ねられる部分が大きくなります。また、情報をオープンにする必要があり、社内の誰もが情報にアクセスできるようになるため、機密情報の管理にも、より注意が必要となります。

まとめ

ホラクラシー組織は、市場の変化の速さに対応しやすい非常に効率的、機能的な組織形態だと言えるでしょう。ヒエラルキー型組織から急激にホラクラシー組織に転換することは、評価・処遇の問題や心理的契約等の観点からもハードルは高いのですが、自律型組織を目指すうえでは参考にすべき組織モデルだと言えます。

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