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5分でわかるVUCA時代とOODAループ

5分でわかるVUCA時代とOODAループ

現代の社会はVUCA(ブーカ)の時代と呼ばれています。新型コロナウイルス感染症や世界各地で起きる災害や紛争による環境変化、AIなどテクノロジーの進化が社会に及ぼす影響など、社会経済環境の予測が困難な時代という認識を示す言葉です。今回は、VUCAの時代に求められる企業の在り方や人材の資質について解説します。

VUCAの意味とは? VUCA時代を読み解く

VUCAとは「Volatility」(変動性)、「Uncertainty」(不確実性)、「Complexity」(複雑性)、「Ambiguity」(曖昧性)の4つの言葉の頭文字からなる造語です。
キーワードごとに「予測困難」な現状を解説します。

・Volatility(変動性)
IT技術の進化や市場の成熟により消費者ニーズは多様化・細分化しています。既存ビジネスモデルが陳腐化するスピードが速く、企業には常に変化をキャッチアップした斬新な商品開発が求められます。

・Uncertainty(不確実性)
新型コロナウイルスやロシアのウクライナ侵攻などでも顕著なように、海外の事象も瞬く間に世界経済に影響を与える時代です。ビジネス上も常に想定外の出来事、リスクを引き受ける必要があります。

・Complexity(複雑性)
グローバル化が進むなか経済とそれぞれの国家の文化・法律・慣習とのせめぎあいが起きています。国際政治経済のトリレンマ(国家主権、グローバル化、民主主義は同時に3つ実行できない)理論で考えると、世界市場はますます複雑化すると予測できます。

・Ambiguity(曖昧性)
ネットワーク社会では業界の垣根があいまいになり業界内外から自社の代替サービスが登場してきます。予測には限界があり常にあいまいな状態のなかで意思決定する必要があります。

VUCA時代に求められる資質と行動

VUCA時代に企業・個人が持つべき資質、行動を解説します。

・明確なビジョン
未来の予測が困難だからこそ「自社・自身がどうあるべきか」というビジョンを明確に持つことが重要です。芯となるビジョンが確立されていれば急激な変化にも柔軟に対応できます。

・短期間での成果創出
5~10年後の近未来も見えづらい時代なのでスピード感を持って事業を進める必要があります。個々の働き方においても短期間で効率よく成果を上げる能力が必要です。

・情報収集と実行
常に最新の情報をアップデートし学習する力が重要です。仮説を立てて動きながらも仮説に固執せず、必要があれば速やかに別のプランを打ち立て実行・検証していく力も必要です。

・多様性・持続可能性を高める
多様化する社会に対応するためには企業内に多様な人材が必要です。また、企業には一事業に固執せず複数の事業を柔軟に手がける力、個人にはどんな組織・環境でも働き続けられる力が求められます。

VUCA時代に注目されるOODAループ

VUCA時代に役に立つ思考法に「OODAループ(ウーダ・ループ)」があります。米国空軍で、兵士が現場で速やかに状況判断するために生まれた意思決定プロセスで、PDCAに代わるものとして徐々に広まってきています。

以下の4ステップを「ループ」させるところはPDCAと似ていますが、必ずしもその順序を徹底する必要はなく、経験や状況に応じてスピーディーに意思決定できる点が特徴です。
(1)観察(Observe)→(2)状況判断(Orient)→(3)決定(Decide)→(4)実行(Act)

(1)観察(Observe)
事象、市場等の状態を観察する

(2)状況判断(Orient)
従来の経験や新しい情報などを分析し、価値判断を含んだ情報にする。状況判断が行えないと判断したら(1)に戻る。

(3)決定(Decide)
(2)の判断をもとに、行動を決定する。状況に変化が生じた場合などは(1)または(2)に戻り、再度決定を行う。

(4)実行(Act)
「意思決定」段階で決定した計画を実行する。実行後は(1)に戻る。

(2)(3)(4)については随時(1)の「観察」段階へ戻ることで、意思決定を柔軟かつスピーディーにできます。ただし「状況判断」のプロセスで経験や知見を加えることを前提としているため、ビジネスでは主に中堅社員以上が対象となり、自走を促すプロセスとして導入されています。各段階を可視化しマネジメントに活かす場合はPDCAサイクルの方が向いているでしょう。

ビジネスのサイクルが早まり、テレワークも浸透する昨今では従業員の自走と素早い判断はますます求められています。OODAを学ぶことはVUCA時代に有用と言えるでしょう。

まとめ

新型コロナウイルス感染症による世界経済への多大な影響、テクノロジーの進化により変わりつつある社会の仕組や人々の行動。現代は長期予測はおろか中短期予測も困難なことからVUCA(Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧性の意)の時代と呼ばれています。

VUCAの時代には核となるビジョンを持ち、情報収集をもとにこれまでの仮説をときには大胆に再構築し、臨機応変に判断しながら成果を創出していく力が必要です。想定外のことが頻繁に起こるため、必ずしも経営層が最適解を出せるとは限らず、現場の人材が状況を観察しスピーディに判断したほうがよい結果につながるケースも増えていくでしょう。

OODAループは、変化の激しいVUCAの時代に企業や個人がチャンスを掴んだり危機を回避するために役立つフレームワークだと言えます。

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