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AI時代のES(社員満足度調査)とアナリティカルシンキング

AI時代のES(社員満足度調査)とアナリティカルシンキング

ES調査に関連したデータとして、2011-2012年にかけて142か国20万人以上を対象にギャラップ社が行った「国別のEmployee Engagement比較」によると、日本においては会社に対して 「Engage(愛着がある、信頼関係があるの意味)している」と答えた比率はわずか 7パーセントであり、先進国中一番低いとのデータがあります。世界において日本の人口一人当たりのGDPが年々ランクダウンしているのは、このあたりも要因の一つかもしれません。

一方、2017年4月の労政時報における「人事関連制度の改定状況アンケート」における回答企業の「4割強がES調査を実施し、そのうち7割は新たにES調査を開始した」との結果で見るようにES調査を実施する企業は確実に増加しているようです。

近年、我々のクライアントからも以下のようなニーズでES調査のご相談を頂くケースが増えています。

  • 過去に実施したES調査の結果に対して、様々な施策を実施してきたが、その効果を検証したい。
  • これから定点観測として定期的にESを実施し、Engage効果を高めていきたい。
  • 投資ファンドが投資先企業の社員の意識の現状を把握しておくためESを行いたい。

新たにES調査の取り組みが増えている理由は、ESの高い企業ほど業績に好影響を与える傾向があるとの認識が高まったこともありますが、ここで改めてとその背景について取り上げてみたいと思います。

まず考えられるのは、採用環境が売り手市場となり、人材獲得競争が激しくなっていることがあります。つまり、これから採用しようとする人材に対し、社員の満足度が高い企業とのイメージをアピールして応募者を増やす必要があるためであり、もう一つは、既存社員の離職を抑制するために、ESサーベイを活用して実効性のある施策を打つことが重要な課題となっているためです。

既存の社員に関して言えば、新たな人材の確保や育成にかかる費用が膨らむ中、実際にその投資に見合う人材の採用が不確実である状況を考えると、既存社員のモチベーションや能力向上に投資をした方が総合的なメリットが大きいと考える企業が増えていることがあります。

また、企業内には正社員だけではなく、契約社員、パート・アルバイト、派遣社員など多様な雇用形態が存在し、働き方もフレックス、リモートワーク、短時間勤務、副業など選択肢が増えています。その中で、きめの細かいESサーベイによる検証を行い、全体最適かつフェアな施策の必要性が高まっていることも見逃せません。

かつては、ES調査の結果がネガティブに出る事態を危惧して、実施をためらっていた企業も、ES調査を活用した施策によるエンゲージメント向上が社内の活性化や業績に好影響を与えるという認識が高まり、ESの実施に向けたハードルが下がってきたことも大きな要因でしょう。

ES調査の実施にあたっても、以前は紙やPCが中心でしたが、近年のクラウドサービスの進化に加えスマホやタブレットの普及によって、簡便にアンケートの実施と回収が可能となり、手間のかかる紙による制作や回収作業がなくなったことも増加につながっています。

従来はES調査で収集した結果だけを検証して施策を検討するケースがほとんどでしたが、現在は収集されたデータの活用方法も大きく変ってきています。最近、我々が行ったコンサルティングに、ES結果のデータだけでなく、多様な人事データ(評価項目の結果、研修実績、出退勤時間、残業、有給休暇傾向など)をAIをエンジンとする解析ツールを活用して多次元のデータを分析するプロジェクトがありました。その結果「パフォーマンスの高い組織と低い組織との違い」「退職や休職に至る人材の特性」など、いままで着目されていなかった要因を抽出することができ、一歩先を読んだ効果的な人事施策を打つことが可能になったのです。

通常ES調査において従業員満足度を分析するポイントは大きく「①仕事自体と評価」「②働く条件と環境」「③会社への信頼感」の3つだと言われています。その各ポイントの要素を企業特性に応じて可能な限り具体化し、データ化し、見える化し、収集し、分析することで、始めて実効性と即効性のある施策に直結し、社員の満足度、エンゲージメントを高めることにつながります。

働く環境といえば、近年AIやRPA(Robotic Process Automation)の進化により、これまでシステム化が難しいとされていた人手による事務処理の領域も自動化が容易になりつつあり、ルーティーンワークの多くを機械が代行する事から、人にはより高度で独自性の高い役割が求められる状況になっています。

今後、組織と人の在り方や生産性がますます重要となっていく中では、ES調査だけでなく、組織内にどのようなデータが蓄積されているのか? 重要なデータとは? データから何を解析するのか? 解析した結果をどのように活用するのか? など・・・これまでとは異なる新たな思考とアプローチによる意思決定と施策が必要になっているのです。

ビジネスの現場でAIや機械学習が活用される時代には、ビジネスリーダーの果たすべき役割は、ES調査に限らず、多様なデータを分析し活用した意思決定と施策の実行です。

セレブレインでは、データを分析して意思決定するために欠かせない実践的アプローチ手法を身に着けるプログラムとして、アナリティカルシンキング(ATT)トレーニングを提供しています。ご興味をお持ちの方は、お問い合わせ下さい。

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