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人事・労務デューデリジェンス(DD)における「不都合な結果」と「見えない結果」

人事・労務デューデリジェンス(DD)における「不都合な結果」と「見えない結果」

 人事のコンサルティングをしていると、時々気になる場面に出会うことがあります。

最近は企業の株式公開や買収・統合も珍しくなくなってきましたが、その際、重大な人事労務リスクはないか、存在するリスクにどう対応していくかという点もチェックされるようになってきています。このような流れの中、当社も人事労務に関するデューデリジェンス(DD)の依頼を受けることが多くなっています。

 私たちがよく遭遇するのは、規則・規定はしっかりと整備されているのに、実際の現場では、かなりルールとは異なる運用が行われており、大きなリスクとなるケースが多いということです。一般的なDDでは、なぜこの様なケースが見過ごされてしまうのでしょうか。

そのヒントはミーティングでのお客様同士の会話にありました。担当役員と人事担当者の方に法令や規程に照らし合わせて、具体的な運用と処理の取り扱いを伺っていた時のことです。

ー役員「この制度の運用はいつも言っていたところなので大丈夫だよな?」

ー人事担当「・・・はい・・・・大丈夫です・・・」

 発言が気になったコンサルタントが改めて人事担当者に話を伺ったところ、実は現場からの要請もあり、特に大きな問題はないだろうと例外的な運用を黙認していたとのことでした。DDというこれまで想定していなかった局面で、役員から問題がないことを前提に念押しをされたため、「実は・・」と言いづらかったそうです。

 その後、役員にも現場の状況を説明し、対応策を打ったため大きな問題には発展しませんでしたが、現場の状況や担当者の解釈の違いにより、イレギュラーな運用が発生することは、珍しくはないことです。DDという特別な場で役員からの「信頼」がプレッシャーになり、部下が「不都合な結果」を報告しづらい状況を作り出してしまったということでしょうか。

 逆に人事担当者の立場からすると、役員に自らの担当領域におけるミスと思われる報告をする事は気が重いかもしれませんが、人事・労務の領域では後からでは取り返しがつかないことも多く、仮に「不都合な結果」であっても、早い段階でリスクが起きそうな具体的状況、原因、対応策を共有できるよう日頃から関係部門や担当役員とのコミュニケーションをはかり、信頼関係をつくっておくことで適切な対応が可能になると思います。

 セレブレイン社が行う人事・労務DDでは、規程や制度の整備と運用、時間外労働や36協定などデータで見える項目の確認だけでなく、目に見えにくい結果(インビジブル・ファクター)についても精査を行う場合が増えています。例えば、「制度や規程の現場における運用状況、経営方針の組織末端への浸透度合い、企業特有の社風や価値観、退職者の多い部門や職種とその理由、会社に対するコミットメントの度合、社内研修の具体的内容と効果、中間マネジメント層の力量など」です。

その理由は、株式公開や買収、統合は、それ自体が目的ではなく、その後の事業の発展と成長を見据えて行うものだからです。ところが、M&A後の組織人事統合がうまく進まず、事業のシナジー効果がなかなか生まれてこない企業が多いことも事実だからです。

組織と人がもつポテンシャルや活性度をうまく生かすことが、その後の企業の先行きを左右するだけに、今後ますます見えない結果を明確にする人事・労務DDのニーズが高まってくるといえます。

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