会社分割に伴う人事部門の設立。そこで直面した課題とは──ファイントゥデイ資生堂様の事例

株式会社ファイントゥデイ資生堂

クライアント業種

パーソナルケア商品のマーケティング・販売

支援内容:会社分割に伴う人事部門の新規設立支援

世の中の変化に対応し事業の成長を加速させるために、企業変革や人事組織の改革に踏み切る企業の動きが目立つ。しかしながら、変革に合わせて何をすべきか、課題を抱えている人事も多いのではないだろうか。そこで本稿では、資生堂のパーソナルケア事業譲渡に伴う会社分割により、2021年7月に新会社として本格稼働を始めた株式会社ファイントゥデイ資生堂の執行役員 人事本部長 石井 早苗氏に、プロジェクトを支援したセレブレインの人事戦略コンサルティング事業担当の幸前 夛加史がインタビュー。新たに人事部を立ち上げるにあたって直面した課題とそれを乗り越えた過程や、組織づくりにおける戦略などを聞いた。

日本発のパーソナルケア企業としてグローカルな存在を目指す

幸前:早いもので、2021年7月にファイントゥデイ資生堂様が船出されてから半年以上が経過しました。発足時には困難な時期もありましたが、そこを乗り越えて力強い航海をされています。本日は、貴社の船出におけるプロジェクトと、そこに対する弊社の支援について、石井様とお話ししていきたいと思います。まずは、貴社の事業の概要についてお聞かせください。

石井様:本日はどうぞよろしくお願いします。当社は2021年の7月、資生堂のパーソナルケア事業を分割し、資生堂と投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズが合弁事業化、共同出資する形で立ち上げた会社です。『TSUBAKI』『ウーノ』『フィーノ』といったスキンケア・ヘアケア商品のマーケティングや販売を行っています。日本・中国をはじめとするアジア太平洋地域でオペレーションをしており、海外売上比率は50%を超えています。

ミッションとしては、私たちの商品を手に取っていただいた世界中のお客様に、素晴らしい毎日を提供したいという想いを込め、「Making every day a fine day」としています。「日本の美意識をDNAとして持ちながら、世界から期待される素晴らしい企業への進化」「日本発のアジアにおけるグローカル企業のロールモデルへの発展」をビジョンに据え、日本・中国・APACの地域×ブランド×商品という3軸のマトリクスで展開するグローカル企業にチャレンジしていきます。

幸前:資生堂様から残すべきところは残しつつ、それに加えて新会社としての先進性をうまく絡め、「グローカル」な企業を創るというのは、私たちとしても興味深いテーマでした。本日は写真撮影もあるということで、私も『ウーノ』のBBクリームを初めて購入しました。肌のトーンが明るくなりますね。今後愛用したいと思います。

会社分割に伴う人事組織立ち上げという特殊なプロジェクトをどう進めたか

幸前:続いて、実際のプロジェクトのお話に移りたいと思います。まず私から概要をお話しすると、本プロジェクトは事業譲渡に伴う会社分割と、それに伴うファイントゥデイ資生堂様の人事部門の立ち上げがテーマでした。
本プロジェクトの期間としては、大きく3つのフェーズでご支援をしました。第1フェーズは、会社分割の方針の設計です。ここでは社員の移籍におけるスキームや条件、報酬・福利厚生、特に退職金や年金について調整しました。石井様がジョインし、人事チームを創設されました。
第2フェーズは、具体的なトランジションということで、会社分割の労働契約書のスキームをとり、対象となる方々の転籍や出向を進めました。ここでは単に法的な手続きだけではなく、新会社の組織設計も併せて行いました。
そして第3フェーズはファイントゥデイ資生堂の本格稼働後、新会社がスムーズに滑り出せるようご支援をしていきました。

キックオフで、石井様が「このチームは制度を運用するだけでなく、関わる人全員を幸せにしていくことを目指したい」とおっしゃったのがすごく印象に残っています。立ち上げにあたり、石井様が感じたことを率直にお聞かせいただけますか?

石井様:会社分割という会社の立ち上げ方は特殊です。そのため、人事として戦略とビジョンを検討する際は気を付けました。資生堂から移籍する社員、外部から採用する社員、それぞれの気持ちをひとつにまとめ、そして新たなビジネスに適した組織設計や制度構築を行う必要があるからです。加えて、投資家から求められるスピードや透明性なども不備がないように進めなければなりません。そこが通常の人事業務とは異なる動きだったと思います。

幸前:人事のミッションと戦略については、どういった点を重視されましたか。

石井様:人事のミッションとしては、資生堂の組織や文化を理解しつつ、新会社であるファイントゥデイ資生堂の組織と文化を築いていくことでした。具体的には4つあります。
1つ目は、モチベーション維持のための大きな施策として、現行制度をできるだけ踏襲しながら、社員へのコミュニケーションに透明性を持たせ、サステナビリティやガバナンスについても伝えること。
2つ目は、会社分割して切り出した後に採用や機能追加をしていくため、走りながらステージごとに組織拡大・採用・機能追加の計画変更をすること。
3つ目は、情報が経営資源のなかでも重要となってきているため、新会社に移籍してもこれまでと同等以上の情報収集を担保し、かつ不安にさせないコミュニケーションプラットフォームをつくること。
最後に4つ目、戦略の最も大事なところでは、ファイントゥデイ資生堂としての文化醸成の施策をしっかりと打つことでした。

セレブレインさんから、人事戦略やHRテクノロジーにおける深い知見はもとより、データをもとにご提案をいただけたことは、走りながら様々な戦略や施策を立てるうえで非常に助かりました。また、会社分割のスケジュールが決まっている中で、実行することの洗い出し、そして最終的な決断をするためのディスカッションパートナーとなっていただけたことで、取捨選択ができ、メリハリのあるプロジェクトとなった結果、新会社の立ち上がりも非常に早かったと実感しています。

新会社の方針固めから組織設計、各部門の目線合わせなど、課題は多岐にわたる

幸前:それぞれのフェーズを思い返すと色々なことがありましたが、プロジェクトを振り返って、直面した課題や当社の支援についてお聞かせいただけますか?

石井様:セレブレインさんには、3つのフェーズにまたがって、それぞれ違う形でバリューをご提供いただけました。

まず第1フェーズについてですが、会社分割の方針を決めるということは、ビジネスとそれに関わる人と組織を決めるということでした。双方が合意しての会社分割とはいえ、やはり情報が色々な部署にまたがっており、それを人事の人間がすべて収集することは非常に難しい状況でした。そこでセレブレインの方々がステークホルダーからの情報を集め、ひとつのストーリーにしていただけたことで、私たち人事も新会社の経営陣と投資家に対してデータをもとに提案し、意思決定をすることができました。

第2フェーズでは、タイムラインが厳しい中で、具体的な社員の異動に関して決め、移籍する社員に説明しなければならないという局面が何度もありました。そこでセレブレインさんが複数部門にまたがるヒアリングを実施し提案にまとめてくださったことで、私たち人事はコア業務に集中することができました。もし自分たちですべての要件の整理やストーリー作り、関係各所へのヒアリングや説明などを行っていたら、とても投資家から求められるスピードでは進められなかったと考えます。

第3フェーズで課題となったのは、新会社がスタートしたあとは新会社のガバナンスが走り出したため、資生堂とは異なるスピードで会議をしたり、投資家へのレポートや数値をまとめたりする必要があったことです。セレブレインさんにサポートしていただけたことにより、レポートの信ぴょう性、確実性、そしてスピードも担保できました。

また、HRのDXが重要となる中で、新会社がいつまでにどの程度のHRテクノロジーを導入すべきか、移行期間内の業務取扱契約の枠組みの中でどうすれば適切に移行できるのかなどは、全フェーズにおいて非常に難しいポイントでした。ここでITコンサル出身の幸前さんをはじめ、ITの知見をお持ちでプロジェクト全体を見渡せる方から的確なアドバイスをいただけたのが助かりました。おかげさまで、スムーズに進めることができたと思います。

幸前:ありがとうございます。会社分割において、会社としてはできるだけシンプルなスキームで進めたいものです。一方、現場に近い人事としては、社員の顔が見えているため、紋切り型ではうまくいかないという現実もあります。各々の立場で色んな想いがあるなかで、最終的な条件や説明の仕方をコーディネートすることが、私たちの役割の一つだと考えています。

石井様:レベル感の異なる巻き込み方をしていただきましたね。まずは、多様な部門の人が集まる毎週のステータスミーティングで、全員に同じような問題意識を持ってもらえるよう、確実にファシリテーションをしていただきました。次に、各分科会で想いが異なるところを個別にヒアリングしてつないだり、スモールミーティングをしたりして、地ならしをしてくださいました。さらには、人事サイドの採用ができていなかったことから、年金の契約の話など細かいスキームの理解や移転など助けていただきました。

幸前:現在は外部から採用された方も多く入社していらっしゃると思います。人事戦略の重要なひとつとして新会社の文化醸成もあったと思いますが、現状はいかがでしょうか?

石井様:新会社スタート時は、多くが資生堂からの出向・転籍者でしたが、現在は半数以上が外部より採用した社員です。以前は、「資生堂の時は…」といった声もありましたが、今はそれぞれの経験や知識を持ち寄って、新会社ならではの姿を作っていこうという姿勢に変わり、先のことに目線が向いていると感じます。自由度の高い今の環境を活かして、社員がチャレンジし、失敗も含めて楽しめる、そんな会社にしていきたいと思います。

今回のプロジェクトを通じて、個人や会社だけでなく日本の社会にとっても、異なるバックグラウンドの方が集まって、会社を新陳代謝させていくというのは非常に良いことだと実感しました。当社の成長を目指すことはもちろんですが、同じように羽ばたいていける会社がもっと増えるといいなと思っています。

コア業務に集中するための環境を整えることがコンサルタントの役割

幸前:今回のプロジェクトに当社はコンサルタントとしてご支援をいたしましたが、企業や人事の変革において、外部のコンサルティングを入れることは、どのような意味があるとお考えですか?

石井様:まず、複雑かつスピード重視のプロジェクトでは、外部プロフェッショナルを活用することでリソース・スピード両面の支援をいただけますので、プロジェクトオーナーとしてはコア業務に集中できます。

そして今回のケースのように、新会社でIT部門や人事部門のリソースも十分ではない場合、専門家の豊富な知見や視点からアドバイスをいただけるというメリットも大きいです。セレブレインさんにはDXの専門知識のある方、社会保険や制度設計の知見がある方がいらっしゃり、心強かったですね。資生堂の複雑な仕組みを咀嚼し、新会社ですべきことを順序立てて示していただけたことで、私たちのチームが動きやすくなりました。

コンサルタントの方が、世の中の様々なテクノロジーやトレンド、法規制などの知見からアドバイスをしてくださることは、おそらくその会社の2年3年先に効いてくるのではないかと思います。どうしてもプロジェクトの場合、「半年でここまで到達しなければいけない」という目先の目標に集中してしまいがちですが、セレブレインさんは、走りながら変わっていく新会社の方針や、独立した先に何が起こるのかも含めた視点でプロジェクトの舵取りをしていただけたという印象です。

幸前:大前提として「新しい会社をどうしていくのか」を決めるのは、私たち外部の人間ではなく、新しい会社の方々だという想いがあります。そこで私たちにできることは、それを判断していただくための様々な下準備や必要な情報の提供・整理を行うことです。
システムだけ、制度だけではなく、事業会社の人事の方と同じ目線で、この世界で起こっていることに幅広く対応していくことを信条としています。今回のプロジェクトで、当社のコンサルタントの経験や幅広い知見がお役に立てたのであれば、これほど嬉しいことはございません。石井様、本日はありがとうございました。

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