人事施策 2022年3月07日 「ジョブ型雇用」導入事例と運用のポイント [目次] 「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への転換を図る日本企業 ジョブ型雇用導入の際の重要ポイント まとめ 「メンバーシップ型」から「ジョブ型」への転換を図る日本企業 職務内容を明確に定義して採用を行い、仕事の成果によって評価や処遇を決める「ジョブ型雇用」。 価値観の多様化や、リモートワークへの移行など、ビジネス環境の大きな変化を背景に、ますます注目が集まっています。 今回は、この「ジョブ型雇用」を積極的に導入・推進している企業の事例と、導入のポイントをご紹介します。 ・富士通株式会社の事例 日本と海外で異なる人事制度を運用していた富士通は、2020年に国内1万5,000人の幹部社員について、報酬体系を職責ベースとする『FUJITSU Level』へと切り替えました。2022年キャリア採用、2023年度新卒採用計画においても、ジョブを起点として職種ごとに適した人材の採用をグローバルに展開し、職責や専門性の高さに応じて個別の報酬設定を含む適切な処遇にて迎え入れるとしています。 一般社員についても、労働組合との話し合いを前提に適用を拡大する見込みです。 ・株式会社日立製作所の事例 日立製作所は、現在、全世界で約35万人の連結従業員を抱えており、すでに日本人よりも外国人の比率が上回るグローバル多国籍企業です。2024年度のジョブ型雇用への完全移行を目標に掲げ、国内でも「ジョブディスクリプションの導入・活用の具体化(職務の見える化)およびリスキル教育の強化」を2021年度の重点取り組み事項に挙げ、新卒採用においてもジョブ型インターンシップを導入しました。 ・株式会社資生堂の事例 資生堂の魚谷雅彦社長が「究極の適材適所」と語るジョブ型雇用。すでに課長以上を対象に2014年からジョブ型雇用を導入している資生堂では、対象の管理職社員からも「自分自身のポジションに求められることがよりクリアになっている」と前向きな評価が得られています。 魚谷社長は、従来の日本型雇用は現在の「変化する時代」に合わなくなってきていると述べ、ポストに応じて役割と専門性を明確にすることが多様な人材の公平な人事につながると考えています。 2021年1月からは、総合職の社員3,900人を対象にジョブ型雇用を拡大しました。 ジョブ型雇用導入の際の重要ポイント ジョブ型雇用の導入にあたって重要なポイントは、「ジョブスクリプションの記載内容」と「ジョブ型雇用契約についての従業員への説明」が挙げられます。 日立製作所の事例にあるようなジョブディスクリプションの作成にあたって、企業はこれまでよりも、職種やポジションごとの「職務内容」「達成目標」「責任と権限範囲」を明確にする必要があります。 ジョブ型雇用の導入前はもちろん導入後も、さまざまな局面で従業員に説明をする義務があります。ジョブディスクリプションに記載のない業務を依頼する場合は従業員が納得できる理由を説明しなければなりません。また、ジョブディスクリプションで定義している職務とは異なる職務への配置換えを行うことが簡単にはできないこともあるため、該当する職務の業務量が少なくなった場合や職務自体がなくなった場合を想定して、予めルールを明確にしておく必要があります。 ジョブ型雇用はドライな印象が強いものの、日本において多くの外資系企業がジョブ型雇用のもと優秀な人材を惹きつけ、かつ従業員のエンゲージメント向上も実現しています。重要なのは、雇用契約やジョブディスクリプションの明瞭さと事前の説明の徹底にあると言えるでしょう。 まとめ いわゆる日本型雇用とも呼ばれるメンバーシップ型雇用は、人材を自社に最適化できる長所がありましたが、ジョブローテーションを繰り返すため従業員に専門性がつきにくい短所がありました。また、待遇が横並びになりやすいため、優秀な人材の獲得競争においても弱い立場に置かれることが多くなります。 ジョブ型雇用は、企業側は優秀な人材を市場価値に応じた報酬で採用でき、従業員も専門性を高めていくことが可能な、雇用が流動化している時代にマッチしている雇用形態だと言えます。 ジョブ型雇用の導入を検討する企業は、他社事例をしっかりと確認して詳細なジョブディスクリプションを作成していくことが必要です。あわせて従業員に対して、人事の方針だけでなく、マクロ環境の変化についても情報発信していくことが望ましいでしょう。 ジョブディスクリプション ジョブ型雇用 企業事例 日立製作所 資生堂
人事施策 2022年2月21日 今さら聞けない「メンバーシップ型雇用」と「ジョブ型雇用」 世界経済に暗い影を落とし続けている新型コロナウイルス。一方、アフターコロナを見据えた取り組みとして、これまでの働き方を見直す企業の動きが強まっています。そうしたなかで注目を集めているのが従来の日本型雇用と言われる「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」への転換です。今回は「メンバーシップ雇用」と「ジョブ型雇用」についておさらいしながら、「ジョブ型雇用」が注目される理由について解説します。 [目次] 「メンバーシップ型雇用」の特徴とは 「ジョブ型雇用」の特徴とは ジョブ型雇用が注目される理由 まとめ 「メンバーシップ型雇用」の特徴とは メンバーシップ型の雇用とは「人」に仕事を割り当てる雇用形態です。日本型雇用とも呼ばれているとおり日本企業で広く浸透しています。 新卒採用の際に特に顕著ですが、メンバーシップ型雇用では採用段階で業務内容や勤務地などが限定されません。「人」あっての雇用契約なので採用基準も「どのくらい成長しそうか」「長く貢献してくれそうか」が重視されます。会社方針による転勤や配置転換に従業員は基本的に従うことになります。 企業にとっては長期的に人材の育成・定着に取り組みやすいメリットがあります。従業員にとっても新型コロナウイルスのような予期せぬ環境変化で事業が縮小しても、雇用が維持されやすいメリットがあります。 一方、メンバーシップ型雇用は生産性の向上や人件費の抑制を難しくする面があります。育成や待遇が横並びになりやすいため、たとえば評価制度や人件費にメリハリをつけて最適化したい、といった場合に制度設計の難易度が上がります。 しかし、厳しい市場競争にさらされる昨今の企業は常に生産性向上や人件費の抑制を求められます。また、従業員の価値観も変化し、不本意な人事ローテーションや年功ベース賃金に疑問を感じた人材が、自分のキャリアを最大限に生かせ、かつ正当に評価してくれる人事制度のある企業に転職するケースも増えています。 このような背景もあり、メンバーシップ型雇用は転換点を迎えていると言われ、かわりに注目を浴びているのが「ジョブ型雇用」です。 「ジョブ型雇用」の特徴とは ジョブ型雇用とは「仕事」に人を割り当てる雇用形態です。採用時は自社が求める成果と必要な職務遂行能力を明確にします。企業と求職者は職務・勤務地・労働時間等に合意して雇用契約を結びます。 企業にとっては獲得した人材に高い専門性と生産性を期待できるメリットがあります。成果ベースでの評価もしやすくテレワークとの相性が良いため、コロナ禍で特に注目を集めることになりました。 従業員にとっては、自分の得意な分野に集中でき、専門スキルを高めやすいというメリットがあります。また、若者や女性なども属性で制限されることなく早期にキャリアを積み上げられる傾向にあり、ダイバーシティが進むとも言われています。 ジョブ型雇用が注目される理由 ジョブ型雇用については内閣府や日本経済団体連合会(以下、経団連)が言及しています。 経団連は、2022年1月18日に発表した『2022年版経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)』で、「ジョブ型」について「導入・活用の検討が必要」と明記しました。 報告では、各企業が自社の事業戦略や企業風土に照らして、組織としての生産性を高めるべく、メンバーシップ型を活かしながらジョブ型を最適に組み合わせた、「自社型」雇用システムをつくり上げていくことが大切だとしています。 過去に記者会見で今後の雇用について「顧客と共に考え付加価値を提供するビジネスモデルへの転換に対応できる人材は日本型雇用システムで育ちにくく、ジョブ型雇用などと組み合わせていくことになるであろう」と発言しています。 すでに資生堂、日立製作所、富士通、KDDI等、ジョブ型雇用の導入を図っている企業も現れています。一方で、多くの日本企業は転換に慎重です。 ダイキン工業の井上礼之会長は、2020年8月の朝日新聞紙上において「遅咲きの人もいる」と、昨今の働き方の変化に懸念を示しています。日本企業の能力開発費が減少傾向であることも懸念点の一つとして挙げられます。 失業率の低さや新卒の育成など従来の日本型雇用の良さも見直される中でのジョブ型の流れですから、当面はハイブリッド型の雇用形態を模索する動きが増えると考えられます。デメリットを抑えるためには、人材育成とセットで考えていく必要もあるでしょう。 まとめ 企業にとっては長期的な人材育成、従業員にとっては雇用の安定というメリットがあるメンバーシップ型雇用は、これまでの日本企業の強みを生み出す源泉だったと言えます。しかし、2000年代以降のグローバル化、IT化による産業の変化に対応し組織の競争力を上げるために、専門性や生産性を高めやすい方法としてジョブ型雇用が検討され始めました。 ジョブ型雇用は、変化が激しく雇用が流動化した環境下において、企業と個人の双方にメリットをもたらすこともできると期待されています。メンバーシップ型雇用が機能しづらくなっている現在、企業はジョブ型雇用のメリットをうまく取り入れて、時代に合わせて雇用のあり方を最適化する必要があるでしょう。 JOB型雇用 ジョブ型雇用 メンバーシップ型雇用 日本型雇用
人事施策 2021年9月17日 ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォームで 学び続ける文化の醸成~日本アイ・ビー・エムの例~ 近年、ビジネス環境の変化が加速しており、職場での学習の在り方にも変化が求められています。グローバルでは、これまで主流だったLMS(ラーニング・マネージメント・システム)では効果的な学習は難しいという見方が広まり、代わってLXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)が注目されています。 本記事ではLMS、LXPとは何か? また、LXPを導入した日本アイ・ビー・エム社の実例を紹介します。 [目次] LMS(ラーニング・マネージメント・システム)とLXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)の違いとは 「学び続けること」に価値を置く日本アイ・ビー・エム 「Your Learning」を導入、日本アイ・ビー・エム社員の活用率・学習時間は世界で常にトップクラス コロナ禍で「Your Learning」を使ったオンライン学習が加速 まとめ LMS(ラーニング・マネージメント・システム)とLXP(ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム)の違いとは LMSとは、eラーニングを効果的に進めるための学習管理システムのことであり、「受講者や教材の管理」「学習進捗の管理」が容易になるメリットがあります。 LXPとは、受講者の学習ニーズを自動的に分析し個々のニーズに合った学習リソースを膨大な情報から検索、推奨できる学習システムであり、受講者の自律的な学習を促すのに有効なプラットフォームです。。 「時代はLMSからLXPへ」という主張もありますが、実はそれぞれ長所があります。LMSは社内全体で足並みのそろった学習を行い履歴を残したい場合に有用ですし、LXPは各従業員の自律学習のサポート、社員同士が学びあう文化の醸成に効果的です。目的に合わせて使い分けていくことが大切です。 「学び続けること」に価値を置く日本アイ・ビー・エム ここからは実際にLXPを導入した日本アイ・ビー・エムの例を紹介します。 もともとIBMは、創始者のトーマス・ワトソン・シニア氏の「教育に飽和点はない」という言葉に象徴されるように、社内に学び続ける文化を育ててきた企業です。2013年には、当時のCEOジニー・ロメッティ氏が「THINK40」を提唱し、社員が年間最低でも40時間をスキル開発に充てることを薦めるなど、経営陣が社員のスキルアップや社員への学習機会の提供に強くコミットしています。 優秀な人材が常に学び続けるIBMでは社員の特許取得件数も非常に多く、米国特許取得企業ランキングでも28年連続第1位。創業以来6名のノーベル賞受賞者も輩出しています。 「Your Learning」を導入、日本アイ・ビー・エム社員の活用率・学習時間は世界で常にトップクラス IBMでは2016年にIBM Watsonの機能を用いたLXP「Your Learning」を導入しました。Your Learningとは一人ひとりにパーソナライズされた学習の推奨ができ、場所を問わず楽しみながら学べる体験重視型のプラットフォームです。SNS機能があり学ぶ人同士が情報共有や評価しあえるところも特徴です。 導入後もデモを通して社員に活用メリットを伝え、意見を吸い上げて改良を重ねた結果、2019年には世界中の社員の約99%が四半期に1回は活用するようになりました。特に日本アイ・ビー・エム社員は活用率・学習時間ともトップクラスであり、2019年の平均学習時間は年間100時間にも達しています。 コロナ禍で「Your Learning」を使ったオンライン学習が加速 日本アイ・ビー・エムでは2020年のコロナ禍で在宅勤務となる人が増え、Your Learningを使ったオンライン学習がさらに加速したこともあり、対面で行っていた研修のほとんどをオンライン化し自宅から学べるように再設計しています。 新入社員研修もすべてオンラインで実施した結果、デジタルネイティブ世代の新入社員はデジタルツールを使いこなして研修は順調に進み、2020年上半期の学習完了数は前年同期と比較し63%増、平均学習時間も30%増加しました。 こうした取り組みが評価され日本アイ・ビー・エムは2020年9月に「HRテクノロジー大賞(後援:経済産業省、他 主催:ProFuture株式会社)」を受賞しました。 まとめ これまでのe-ラーニングは多様な学びの機会を社員に提供でき、学習進捗管理もスムーズなLMSが主流でしたが、近年は一人ひとりの社員のニーズ・関心にそった自律的な学習を支援できるLXPが注目されています。 学びは、継続こそが重要であり難しい課題です。Your Learningを活用して社員の学びを加速させた日本アイ・ビー・エムの事例は、テレワークを導入していく企業にとって示唆に富んでいると言えるでしょう。 LMS LXP ラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム ラーニング・マネージメント・システム
人事施策 2021年4月22日 効果的なメンター制度で新入社員の早期戦力化とメンバー育成を実現させる! 新入社員の早期戦力化はうまくできていますか?特に業績が急成長中で、人材が急激に増えている企業にとって、新しく入社した社員の早期戦力化は必須の課題ではないかと思います。その解決策は様々あると思いますが、今回はメンバー育成の観点でも効果を発揮する「メンター制度」についてご紹介します。 [目次] メンター制度とは? メンター制度のメリット 導入時のポイント メンター制度を実現するHRテクノロジーの紹介 まとめ メンター制度とは? メンター制度とは、部門を問わず先輩社員が指導役(指導する側:メンター)となり、主に新入社員(指導を受ける側:メンティー)をサポートする制度のことを言います。直接の仕事内容だけでなく、職場環境、キャリア形成、人間関係などの悩みや不安に関して、上司部下のような利害関係なく相談に乗って支援するのが特徴です。 メンター制度のメリット 新たに入社する社員に対してメンター制度を実施する目的としては、以下の3点が挙げられます。 1.職場への早期適応 2.人間関係の構築 3.早期離職の防止 「職場にうまく馴染むことができず、誰にも相談できないまま退職してしまう」 明確な相談役を設けていない場合はこんな事象も発生しがちです。 新たに入社する社員にとって新しい職場というのは大きな環境変化であり、大きな不安を抱えているケースは少なくありません。そんななかでメンター制度は、悩みや不安を解消する相談相手を会社側から仕組みとして用意するため、早期に組織の一員として活躍できるように導いていくことを可能とします。 導入時のポイント それでは実際に導入する場合はどのような点を考慮すべきでしょうか。 ポイントは以下になります。 ・メンター制度を組織として運用する体制の確立 ・年間を通じた計画の立案 ・メンターの任命とそのフォローアップ まずはじめに年間の運用体制をしっかり計画することが重要です。いつまでに誰が何をするのか、その時にどのような状態になっているべきなのか。明確にすることで、振り返りと改善を実施していくことが可能になります。 誰を任命するかにもよりますが、メンター自身もプレイヤーとして業務に追われており、時間的・心理的に余裕が無いことがほとんどです。管理職のように正式に任命される役職ではないため、役割範囲が曖昧で本人の責任感も醸成されにくい傾向があります。 また、メンター自身が成長途上にあり、若手社員とのコミュニケーション等において十分なフォローを行うためのスキルが醸成されていないこともよくあることです。 こうしたことを避けるために、 ・メンターの役割範囲やゴール(目標)を予め明確化しておく ・定期的にメンターをフォローするイベント(研修・ミーティング等)を実施する ・人事評価などでメンターとしての役割行動を評価し、処遇に反映する などが必要とされます。 このようなことを仕組みとして行うためにも、事務局を設け会社としての取組みにすることがポイントとなります。事務局によるバックアップやフォロー体制をつくることで、メンターの属人的な指導や現場任せでうまく進まないといったことを防ぐことができます。 メンター制度を実現するHRテクノロジーの紹介 そんなメンター制度を実施するにあたり、世界で活用されているHRテクノロジーツールをご紹介します。 Mentornity https://en.mentornity.com/ 2015年設立のアメリカのスタートアップです。 メンター制度を実施するためのツールがひとつにまとめられています。 メンタリングの状況がレポートで可視化され、どのようなやり取りがなされているか簡単に記録させていくことができます。 メンター制度の重要性を理解している世界中の大企業で利用され始めています。 まとめ これから初めてメンター制度を実施する企業にとってはどこから手をつけていいかなど、不明点もあるかと思います。そのような際は外部コンサルティング会社などの支援を受けることも選択肢のひとつです。ノウハウや経験をもつ外部コンサルティング会社の支援を受けることで失敗することなくスムーズに導入できる確率は大きくあがります。そして、徐々にノウハウを社内に貯め込みながら継続的に改善をしていくことで、自社独自のメンター制度が完成し、独自文化も構築されていきます。人に教えるということは最も大きな成長機会となることが多いため、メンター制度はメンター自身の成長にも大きく寄与し、組織の成長につながります。まだメンター制度を取り入れていない企業はぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。 セレブレイン社では過去に何社もメンター制度の導入コンサルティングをしておりますので、ご興味ございましたらお気軽にご相談ください。(問い合わせ窓口はこちら。)
人事施策 2020年9月16日 「ピープルアナリティクス」と「タレントマネジメント」との違いとは 近年は経営目標の達成に向けて、「人事を科学する」試みに取り組む企業が増えています。人事担当者の“経験”と“勘”に頼るのではなく、最新のテクノロジーを活用して人事データを分析することで、実際にどのような効果が期待できるのでしょうか? 今回は、人材データ活用における注目キーワード「ピープルアナリティクス」と「タレントマネジメント」について解説します。 [目次] 「ピープルアナリティクス」とは 「タレントマネジメント」とは まとめ 「ピープルアナリティクス」とは 「ピープルアナリティクス」とは、社内に存在する人材に関するデータを収集・分析し、統計的アプローチやエビデンスに基づいて、人材の採用・配置・評価ほか人事施策の意思決定を行っていく概念および取組みのことを指します。 ピープルアナリティクスという言葉を最初に使い始めたのはGoogleだと言われています。昨今、「心理的安全性」という言葉を耳にした方は多いと思います。これは、実はGoogleが「プロジェクト・アリストテレス」と名づけた社内調査において心理的安全性が生産性を左右する指標の5つのうちの1つであると解明したことがきっかけです。 社内の人事データを分析することで、今まで大きな成功要因と見なされていなかった新たな指標を導きだし、多くの経営者やマネージャー層に示唆を与えた事例です。Googleはピープルアナリティクスの定義を、「経営面で確率的な利点を得るために人材マネジメントに統計学と行動科学を体系的に応用すること」としています。 ピープルアナリティクスで扱う人材データは、性別や年齢という基本的な情報に留まりません。個々の従業員のスキル、行動、成果、キャリアプラン、従業員間の相互作用まで多岐に渡ります。 そのため、ピープルアナリクスは一般的な人事業務だけでなく、人材に関するさまざまな人事施策をデータによって客観的に捉えて判断し、その有効性を評価し、改善につなげることに役立ちます。 人事戦略上の難しい課題解決や大きな意思決定を迫られた際にも、豊富なデータを分析して得られたデータをもとに意見を出し合うことで、よりより解決策や判断基準を導き出せるようになります。 【活用領域例】 ●人材の採用、配置、育成 ●人事評価、人材の抜擢 ●離職理由の分析と改善 ●職場開発、組織改革 他 「タレントマネジメント」とは 一方、人事データを活用すると聞くと「タレントマネジメント」をイメージする方、実際に活用している方も多いと思います。 タレントマネジメントは、1990年代に欧米で生まれた概念です。日本では2010年代から注目を集めました。多くの企業が少子高齢化による労働力人口の減少や、働き方改革の推進による人的資源の活用に課題を抱え始めていたからです。 タレントマネジメントは、従業員の人材データを一元管理して可視化することで、人材開発や適材適所の人員配置・育成を行うことをさします。 一般に従業員のスキル、適性、ポテンシャルは入社何年かたつと変化しますが、その情報はブラックボックス化しがちです。仕事や上司との相性、本人の努力で大きく成長しているケースもあればその真逆のケースもあります。いずれにせよ、現場以外の人からは全体像が把握しづらい課題が出てきます。 タレントマネジメントシステムを活用して人材情報を一元管理し、リアルタイムに可視化することで、より戦略的な人材配置(リーダー候補の抜擢、適性を活かす人材配属)や、個々の従業員のスキル・潜在能力を伸ばすキャリア支援が可能になります。 まとめ 「ピープルアナリティクス」は、経営目標を達成するために人材データを収集し統計的アプローチに基づいて人と組織課題に向きあう概念です。人事を科学する「アプローチ手法」とも言えます。 「タレントマネジメント」は人材情報を一元管理・可視化することで、採用や配置、育成などの人事マネジメントを最適化する考え方です。タレントマネジメントシステムを活用する際も、ピープルアナリティクス的アプローチを取り入れることで、より有効な意思決定をすることができるでしょう タレントマネジメント ピープルアナリティクス
人事施策 2020年9月09日 従業員との永続的な関係を実現する! 「エンプロイー・エクスペリエンス」とは? 少子高齢化による労働力人口の減少により、多くの企業が「優秀な人材の採用や定着」に課題を抱えています。近年、この課題の解決策として従業員との永続的な関係構築を目指す動きがあります。 今回は、企業と従業員の関係構築にあたり重要なキーワード、「エンプロイー・エクスペリエンス(Employee Experience)」について解説します。 [目次] 「エンプロイー・エクスペリエンス」が求められる理由 「エンプロイー・エクスペリエンス」を高める取り組みに必要な手法 エンプロイー・エクスペリエンスをデザインする際の注意点 まとめ 「エンプロイー・エクスペリエンス」が求められる理由 エンプロイー・エクスペリエンスとは「従業員満足度」や「エンゲージメント」といった 指標を超えた概念です。入社前、採用プロセス、研修や仕事、評価や異動、退職など企業と従業員が関わる全てのプロセスから個人が得る経験価値を意味します。 背景にはマーケティングの考え方があります。企業は優れたカスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)を提供することで、生産性はもちろんSNSを通じた評価の拡散によるブランド力向上などさまざまな恩恵を得ることができます。同様に従業員に価値ある体験を提供していくことが企業の成長につながるという考え方です。 エンプロイー・エクスペリエンスはデロイト トーマツ コンサルティング合同会社の「2017 デロイト グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド」において、テクノロジーの発展にともない企業が取り組むべきテーマの一つとして取り上げられ、世界的に注目されました。2019年の同レポートにおいては、『すぐれたEE(Employee Experience)を提供している上位25%の企業は下位25%と比べて2倍のイノベーション、2倍の顧客満足度、25%の高い利益率を達成している』というMITの調査結果も紹介されています。 企業業績との相関関係が実証されつつあることから、今後はますます企業の関心が高まっていくことが予測できます。日本でも働き方改革が進むなか、エンプロイー・エクスペリエンスの向上に取り組むAirbnb, Inc. や freee株式会社 などの事例がメディアで取り上げられるようになりました。 「エンプロイー・エクスペリエンス」を高める取り組みに必要な手法 エンプロイー・エクスペリエンスを高める取り組みに有効な2つの手法を紹介します。 まず1つ目は「エンプロイー・ジャーニーマップ」の作成です。 エンプロイー・ジャーニーマップとは人と企業との出会い、就労期間、退職後までを体系立ててデザインする手法です。企業は自社が求める人材がどういった経験価値を求める人物か? 世代、職歴、キャリアビジョン、個人の興味・関心などを明確にする必要があります。マーケティングの「ペルソナ設定」と同じ手法です。 人物像は複数設定し各々に提供できる経験を整理したうえでジャーニーマップに落とし込みます。企業で経験する事柄に付随する個人の思考・感情もマッピングし、エンプロイー・エクスペリエンスを高める施策まで記載します。 そして2つ目は「eNPS(Employee Net Promoter Score)」による評価です。 eNPS(Employee Net Promoter Score)とは、「この会社で働くことを友人や知人にどの程度勧めたいですか?」という質問をする調査ですが、仕事や企業への愛着や満足度など従業員エンゲージメントを数値として把握できるため、取り組みの検証・改善に役立ちます。 エンプロイー・エクスペリエンスをデザインする際の注意点 前述のレポートでは、多くの企業のエンプロイー・エクスペリエンスの取り組みが「組織主導」「トップダウン型」の発想で進められており、改善の余地が大きいと述べられています。 エクスペリエンスのデザインにあたっては、「働きがい」や「キャリアビジョン」といった個人の働く意義がどう職場経験と結びつくかという「個人目線」を持つことが重要です。 まとめ 企業が持続的に成長するためにはエンプロイー・エクスペリエンスの向上が鍵を握っています。「エンプロイー・エクスペリエンス」の向上に努めることで従業員エンゲージメントが向上すれば、顧客満足度や企業収益などにもプラスの影響が期待できます。 eNPS エンゲージメント エンプロイー・エクスペリエンス エンプロイー・ジャーニーマップ
人事施策 2020年8月26日 アフターコロナで採用はどう変わるか 新型コロナウイルスの影響により大きな転換期を迎えた日本の採用市場。2020年は当初予定されていた合同説明会や学内企業説明会が新型コロナウイルスの感染蔓延により中止となり、3月の緊急事態宣言発令以降、多くの企業は採用計画の見直しを余儀なくされました。採用活動のオンライン化は急速に進み、現在もさまざまな手法が模索されています。 本記事では、採用市場の変化と新しい採用活動の取り組み事例を紹介します。 [目次] 今後も加速する採用のオンライン化 採用活動の最新事例 まとめ 今後も加速する採用のオンライン化 株式会社ビズリーチの調査では、2020年4月時点で7割の企業が採用活動のオンライン化を対応・検討し、6割以上が「メリットがある」と回答しています。株式会社マイナビの3月の学生モニター調査では、会社説明会のオンライン化を求める学生は9割近く、一次面接までオンライン化が望ましいと考える学生が7割以上と、オンライン化は企業にも学生にも評価されています。新型コロナウイルスの第2波・第3波も懸念されるなか、採用活動のオンライン化はさらに加速するでしょう。 ・22年卒以降の動向予測 21年卒の新卒採用計画は、1月〜2月に予定していたインターンシップも軒並み中止、3月からの合同企業説明会、学内企業説明会も中止となり、これまで導入率の低かったオンラインによる説明会・面接が一気に普及しました。 この流れを受けて、22年卒の採用活動ではさらにオンラインへシフトする企業が増え、その活用方法にも企業独自の工夫が生まれてくるでしょう。また、オンラインと対面のそれぞれのメリット・デメリットを経験し、双方の良さを生かした、いわば「ハイブリッド」で採用活動を行う企業の割合が高くなると考えられます。 ・求められる採用活動の再設計 企業の多くが次年度に向けて採用活動の改善を検討する必要に迫られるでしょう。対面で有効な説明会や面談はオンラインでは効果を発揮しないことも多く、オンラインと対面それぞれの特性を把握した採用活動の再設計が必要だからです。 採用活動の最新事例 採用トレンドに合わせた設計・戦略の中では、オンラインでこそ訴求する魅力的な採用コンテンツを提供できるかどうかが、活動の成否を分けることになります。4件の最新事例を紹介します。 ・事例1: オンライン座談会 会社説明会の直後に社員と学生が気軽に話す「座談会」をオンラインで行うケースが注目されています。ZOOMの「ブレイクアウトセッション機能」などを活用し参加者画面を分割することで、双方向コミュニケーションを実現します。 ・事例2:録画面接 企業があらかじめ設定した質問に対して応募者が回答や自己PRを自分で撮影・録画して、企業に送信する面接手法です。面接日の調整が不要であり、全ての応募者に同じ質問内容の面接ができるためフラットな判断ができるメリットがあります。 ・事例3:バーチャル職場見学・工場見学 動画でのバーチャルな「オフィスツアー」や「工場見学」が注目されています。アスクル株式会社は本社内の全景や細部が360°見渡せるVR動画をアップしてスタイリッシュなオフィスの強みを訴求しています。某地方メーカーはオンライン工場見学を取り入れ、技術者の作業シーンなどを訴求することで県外からの参加申込を増やしています。 ・事例4:オンラインインターンシップ IT企業や大手メーカーを中心に、オンラインで完結するインターンシップが注目を集めています。企業がミッションを設定し、学生が課題をクリアして先輩社員からフィードバックをもらう手法が主流です。企業によっては、オンラインインターンシップ参加者をリアルな職場交流会に招待したり採用選考で優遇するなど、リアルな活動とどう連携させるかがポイントになるでしょう。 まとめ 新型コロナウイルスの影響により、期せずして企業も学生も採用のオンライン化のメリットを知ることになりました。今後はますます本格的に採用のオンライン化に取り組む企業が増えるでしょう。最新事例から学び、アフターコロナの採用活動を勝ち抜いていけるように、準備を進めていきましょう。 Aftreコロナ withコロナ アフターコロナ オンライン 人材採用 新型コロナウイルス
人事施策 2020年8月19日 DXの実現に必要な人材とは(後編) DX(デジタル・トランスフォーメーション)の実現にはIoTやAIなど最先端のデジタル技術を活用し、市場の変化にあわせてビジネスモデルを変革したり、新たな価値を創出できる人材を確保することが急務です。 今回は、DX人材を採用する際のポイントとDX人材の育成方法について解説します。 [目次] DX人材の採用手法と採用時の注意点 DX人材育成のキーワード「Reスキル」と「リカレント教育」 まとめ DX人材の採用手法と採用時の注意点 独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は、2019年、IoTやAIを活用したITサービス市場に従事する先端IT人材の転職方法についてアンケート調査を実施しています。 調査結果では、最先端の技術を持つIT人材の転職方法は「友人・知人等の紹介」や「人材サービス企業からの紹介」がいずれも3割を超え、次いで「ヘッドハンティング」が3割弱です。現在のDX人材の採用は、リファラルなどのダイレクトリクルーティングも主流になりつつあると言えるようです。 転職を決意した理由として最も多かった回答が、「自分のやりたい仕事ができなかったから(34.8%)」であることから、DX人材を採用する際は相手の持つスキルや経験とのマッチングだけでなく、相手が希望する仕事と自社が期待するDX人材としての役割のマッチングがポイントであることがうかがえます。 とはいえ、国内外においてDXの実現に必要な先端ITスキルを持つ人材がそもそも希少なことも事実です。多くの企業は、高額なオファーで厳しい人材獲得競争に勝ち優秀な人材を確保すること自体、困難でしょう。 そこで注目を集めている人材確保の取り組みが、自社内でのDX人材の育成です。 DX人材育成のキーワード「Reスキル」と「リカレント教育」 DX人材の育成には、従来型IT人材から先端IT人材へと転換するための「Reスキル推進」が重要と言われています。 従来型IT人材とは、既存システムの受託開発、保守・運用サービス市場に従事する人材のことです。つまり従来型IT人材を既存システムの維持保守業務から解放しDX分野にシフトさせ、先端IT人材として育成するということです。 事業部門人材のIT教育や適材適所の配置など、IT部門外人材の流動化を促進して先端IT人材を確保するといったアプローチも重要です。この場合、ITスキルの習得からDX人材の育成施策を検討する必要がありますので、いわば企業による「リカレント教育」の推進だと言えるでしょう。 IPAの資料によると、DXの取り組みで成果を出している企業は、一過性でなく継続的かつ全社的に勉強会や啓発のための研修などを行っています。 【例】 •経営層を含む定期勉強会 •CDO 自ら全社員向けにデジタル研修実施 •全社員向けの啓発研修 •海外のスタートアップの情報を現地で収集 •DXメンバー の自発的な最新技術把握・実践 •コンテスト、資格取得奨励、他 また、教育の取り組みが多岐に渡っているほか、組織文化において「リスクを取り、チャレンジ」、「多様な価値観受容」、「仕事を楽しむ」、「意思決定のスピード」という傾向があるという結果も出ています。経営層が中長期的な視点のもと、全社的にデジタル社会に対応できるような教育を実施していることがうかがえます。 しかし、DX人材の育成には時間がかかることや、先端IT人材が従来型IT人材よりも「自分のやりたい仕事」、「クリエイティブな仕事」、「先端的な仕事」を求めて転職する傾向が高いことを踏まえ、外部から人材を獲得する努力を継続することも重要です。もし、マッチングが上手くいき優秀なDX人材を採用できれば、社内の人材にポジティブな影響を与え、人材育成上も大きなプラスとなるでしょう。 まとめ DX人材の育成・採用については、DXの実現が企業の経営戦略上不可欠であることを、まず経営層が強く認識する必要があります。「人材流動化」や「Reスキル支援」は全社的な取り組みがあってはじめて成果を出せるからです。 企業には、個々の社員のキャリアビジョンとITリテラシーを考慮しながら、既存の社員に学び直しの機会を積極的に提供する努力が求められます。採用市場にスキル・経験を保有するIT人材が希少なことを踏まえて、社内リカレント教育を推進するための「Reスキル支援の仕組み・環境づくり」をしていきましょう。 digital transformation DX Reスキル デジタル・トランスフォーメーション リカレント教育
人事施策 2020年8月12日 DXの実現に必要な人材とは(前編) IoT、AI、ビッグデータなどのテクノロジーの指数関数的な発展に伴って、世界規模でビジネスのDX(デジタル・トランスフォーメーション)化が進んでいます。多くの企業がこの変化を前にビジネスの転換期を迎えています。今回はDX推進に不可欠な「DX人材」について解説します。 [目次] DX人材とは、新たな価値を生み出せる存在 必要になるDX人材 なぜ今、DX人材が必要なのか まとめ DX人材とは、新たな価値を生み出せる存在 DX人材の理解にあたって、まずは「DX」について確認してみましょう。DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の略称です。 経済産業省は「デジタル・トランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」において、DXを以下の通り定義しています。 『企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること』 DXの成功例には、Amazon、Facebook、Appleなどがよく知られています。いずれも既存業界を変革するだけでなく、人々のライフスタイルにも大きな影響を与えました。 また、日本の基幹産業である自動車業界も自動運転技術の登場により100年に1度と言われる大変革期を迎え、DX化を加速しています。あらゆるモノがインターネットに接続し、AIでデータを分析できる時代には、車の運転も周囲の状況をセンサーでキャッチした安全走行が可能になります。 今や自動車=「乗るもの」「所有するもの」という概念が変わりつつあり、安全で快適な空間の在り方、新しい都市の在り方が構想されていることを、ニュース等で目にした方も多いのではないでしょうか? DXとは単なるデジタル化、技術革新ではなく、人々の暮らしや社会の在り方にまで変容をもたらすことを意味します。DX時代においては、単にデジタル技術に優れているだけではなく、技術を活用して顧客に新たな価値を提供できるDX人材が必要になります。 必要になるDX人材 独立行政法人情報処理推進機構(以下、IPA)は、2019年にDXの取り組み実態の把握やDX推進の組織や人材のモデル化を目的とした調査の結果を公開しています。調査対象は、東証一部上場企業です。 その中で、DX人材の一例として以下の職種を定義しています。 ・プロデューサー DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材 ・ビジネスデザイナー DXやデジタルビジネスの企画・立案・推進等を担う人材 ・アーキテクト DXやデジタルビジネスに関するシステムを設計できる人材 ・データサイエンティスト/AIエンジニア DXに関するデジタル技術(AI、IoT)やデータ解析に精通した人材 ・UXデザイナー DXやデジタルビジネスのユーザー向けデザインを担当する人材 ・エンジニア/プログラマ 上記以外にデジタルシステムの実装やインフラ構築等を担う人材 なぜ今、DX人材が必要なのか 同調査では、8割を超える企業がプロデューサー、ビジネスデザイナー、アーキテクト、データサイエンティスト/AIエンジニアの人材が不足している、と答えています。 約6割の企業が「自社の優位性や競争力の低下」を懸念し「ビジネス変革の必要性を非常に強く感じている」と回答しているものの、取り組みは「業務の効率化による生産性向上」に留まり、「新規製品・サービスの創出」は半数に満たないという実態も明らかになっています。 その理由として、現在の「既存システム」がDX実現の障壁となっていることに加え、DXに向けてビジネスモデルやシステムを見直したくても、必要な人材が社内にいないことが挙げられています。DXの推進に向けてまず取り組むべきは、人事面の課題だと言えるでしょう。 まとめ DXとは、データやデジタル技術を活用して市場に変革をもたらし、顧客に新しい価値を提供していくことであり、企業のDX推進にあたっては多様なDX人材が必要になります。DX化は企業が優位性や競争力を維持するための必須課題ですが、多くの企業でDXを推進する人材が不足しているのが現状です。企業には、まずDX人材を確保するための採用・育成という人事戦略が求められています。後編では、DX人材の育成方法について解説します。 digital transformation DX DX人材 デジタル・トランスフォーメーション
人事施策 2020年8月05日 日本で「エンゲージメント」が重視される3つの理由と、得られる効果とは 日本人の仕事に対する価値観は、少子化による若手人材の不足、雇用形態の多様化、終身雇用からジョブ型雇用へ転換を図る企業の増加なども影響し、昔より多様化してきました。企業と個人の関係はフラットになりつつあり、ミレニアル世代以降の若者は、特にその傾向が強いと言えるでしょう。 このような流れのなか人事領域で注目されてきたのが「エンゲージメント」という概念です。今回はエンゲージメントの意味、重要性が高まってきた背景、エンゲージメント向上の効果を紹介します。 [目次] 組織と個人の関係を表す「エンゲージメント」とは? 日本で「エンゲージメント」が重視される3つの理由 エンゲージメント向上による効果 まとめ 組織と個人の関係を表す「エンゲージメント」とは? エンゲージメントとはお互いの愛着や貢献意欲を意味する言葉であり、人事の視点においては企業におけるミッション・ビジョンを明確に打ち出し、従業員に対して仕事に意欲を持てる環境を提供することで、従業員が企業の方向性や目標に対して共感し、貢献したいと思う相互の関係性の強さを意味します。 エンゲージメントは1990年代、米国の企業で生産性向上に対する意識が高まるなか従業員満足度にかわる概念として注目され始めました。従業員満足度よりも企業の生産性との関係性が強いと解釈されたことが大きな理由です。 日本で「エンゲージメント」が重視される3つの理由 日本で注目され始めている理由は3つあります。 ・個人の価値観の多様化 近年の若い世代は、仕事に対して収入や昇格よりも働く意味、やりがいを重視する傾向があります。一方、50代を中心とするミドル層は1社に長く勤め上げ、安定した収入と出世を目指すことに価値をおく層が多数派です。世代によって価値観が異なるだけでなく、女性や外国人社員の増加、雇用形態の多様化も進み、今は一つの組織内に様々な価値観を持つ従業員が存在します。多様化した従業員の価値観、ニーズに応えるためにエンゲージメントが注目されています。 ・組織と個人の関係性の変化 少子化により若年層の優秀な人材を確保する競争が熾烈になっています。若い世代は終身雇用に幻想をあまり持っておらず、自分の成長を重視し、現状に不満がなくても転職する傾向があります。個人と組織が対等な関係に変化するなか、企業には個人の意志を尊重したキャリア設計を実現することが求められるようになり、エンゲージメントが着目され始めました。 ・科学的根拠に基づいた人事アプローチ HRテクノロジーの進歩により、従業員データを収集しデータやエビデンスをもとに意思決定する人事アプローチが重視されています。エンゲージメントは生産性との相関関係などを測定できる指標でもあるため活用する企業が増えています。 エンゲージメント向上による効果 エンゲージメントを高めることで期待できる効果を紹介します。 ・離職率の低下、優秀な人材の流出を防ぐ 2018年、モチベーションエンジニアリング研究所が慶應義塾大学院の岩本研究室と共同でグループの4法人を対象に行った調査では、エンゲージメントスコア(ES)と退職率の相関に-0.73~-0.97という「強い負の相関(逆相関)」が見られ、ESが高いほど退職率が低い傾向にあることがわかりました。メンバー層、管理職層双方の退職率に影響を与えていることから、エンゲージメント向上が優秀な人材の流出防止につながることが推測できます。 ・業績、生産性の向上 また、同研究所が上場企業66社に対し行った調査において、従業員エンゲージメント向上が営業利益率や労働生産性にプラスの影響があるという結果も出ています。国内外の複数の機関からも同様の調査結果が発表されていることから、従業員エンゲージメント向上に取り組むことで生産性が向上することも期待できます。 ・リファラル採用 社員に友人、知人を紹介してもらうリファラル採用に協力する社員は、「会社が好き」「会社に貢献したい」と思う、まさにエンゲージメントの高い社員です。エンゲージメントが高い社員が増えるほどリファラル採用が成功することが期待できます。 まとめ 価値観の多様化、HRテクノロジーの進歩とともにエンゲージメントという概念が注目されています。エンゲージメントと生産性の直接的な相関については様々な研究機関から調査結果が発表されているため、今後もエンゲージメント向上に取り組む企業は増加していくでしょう。 エンゲージメント ミレニアル世代 リファラル採用 生産性向上 離職率