コラム 2018年2月13日 服部 篤 人事・労務デューデリジェンス(DD)における「不都合な結果」と「見えない結果」 人事のコンサルティングをしていると、時々気になる場面に出会うことがあります。 最近は企業の株式公開や買収・統合も珍しくなくなってきましたが、その際、重大な人事労務リスクはないか、存在するリスクにどう対応していくかという点もチェックされるようになってきています。このような流れの中、当社も人事労務に関するデューデリジェンス(DD)の依頼を受けることが多くなっています。 私たちがよく遭遇するのは、規則・規定はしっかりと整備されているのに、実際の現場では、かなりルールとは異なる運用が行われており、大きなリスクとなるケースが多いということです。一般的なDDでは、なぜこの様なケースが見過ごされてしまうのでしょうか。 そのヒントはミーティングでのお客様同士の会話にありました。担当役員と人事担当者の方に法令や規程に照らし合わせて、具体的な運用と処理の取り扱いを伺っていた時のことです。 ー役員「この制度の運用はいつも言っていたところなので大丈夫だよな?」 ー人事担当「・・・はい・・・・大丈夫です・・・」 発言が気になったコンサルタントが改めて人事担当者に話を伺ったところ、実は現場からの要請もあり、特に大きな問題はないだろうと例外的な運用を黙認していたとのことでした。DDというこれまで想定していなかった局面で、役員から問題がないことを前提に念押しをされたため、「実は・・」と言いづらかったそうです。 その後、役員にも現場の状況を説明し、対応策を打ったため大きな問題には発展しませんでしたが、現場の状況や担当者の解釈の違いにより、イレギュラーな運用が発生することは、珍しくはないことです。DDという特別な場で役員からの「信頼」がプレッシャーになり、部下が「不都合な結果」を報告しづらい状況を作り出してしまったということでしょうか。 逆に人事担当者の立場からすると、役員に自らの担当領域におけるミスと思われる報告をする事は気が重いかもしれませんが、人事・労務の領域では後からでは取り返しがつかないことも多く、仮に「不都合な結果」であっても、早い段階でリスクが起きそうな具体的状況、原因、対応策を共有できるよう日頃から関係部門や担当役員とのコミュニケーションをはかり、信頼関係をつくっておくことで適切な対応が可能になると思います。 セレブレイン社が行う人事・労務DDでは、規程や制度の整備と運用、時間外労働や36協定などデータで見える項目の確認だけでなく、目に見えにくい結果(インビジブル・ファクター)についても精査を行う場合が増えています。例えば、「制度や規程の現場における運用状況、経営方針の組織末端への浸透度合い、企業特有の社風や価値観、退職者の多い部門や職種とその理由、会社に対するコミットメントの度合、社内研修の具体的内容と効果、中間マネジメント層の力量など」です。 その理由は、株式公開や買収、統合は、それ自体が目的ではなく、その後の事業の発展と成長を見据えて行うものだからです。ところが、M&A後の組織人事統合がうまく進まず、事業のシナジー効果がなかなか生まれてこない企業が多いことも事実だからです。 組織と人がもつポテンシャルや活性度をうまく生かすことが、その後の企業の先行きを左右するだけに、今後ますます見えない結果を明確にする人事・労務DDのニーズが高まってくるといえます。
ワインの豆知識 2018年2月08日 赤坂のソムリエに訊く!今更聞けないワインの基本、赤・白・ロゼの違い ※上の画像の料理に合うワインはどんなワインだと思いますか? ソムリエからの回答はこの記事の一番最後に。最後までぜひご一読ください。 (画像はあじる亭 人気メニュー:シャルキュトリー盛り合わせです。) ワインには白ワイン、赤ワイン、ロゼワインがあるのは誰もが知っていること。しかし、その違いについて、ちゃんと理解している人は意外と少ないのでは? 今回はワイン初心者の方々向けに、各ワインの違いについてご紹介します。これを知っていれば飲み会などで知ったかぶりできること間違いなし?! [目次] 白ワイン、赤ワインの原材料と製法の違い ロゼワインとは? どんな料理に合うのか? まとめ 白ワイン、赤ワインの原材料と製法の違い 白ワインと赤ワインは原材料が異なります。白ワインは白ブドウから、赤ワインは黒ブドウ(赤ではなく黒です。皮の色で名称がついています)から作られます。 白ブドウの種類にシャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなどがあります。(参考までにブラン=Blanc=白という意味です) 黒ブドウの種類にカベルネソーヴィニヨン、ピノノワールなどがあります。(参考までにノワール=Noir=黒という意味です) ここで紹介した4つのブドウの品種が世界各地で栽培されている有名なブドウです。ブドウの種類によっても味は変わりますが、これらのブドウの違いについては改めてご紹介します。 そして、原材料だけでなく製法も白ワインと赤ワインでは異なります。 白ワインはブドウから皮や種を除きジュースを絞りだし、その後発酵させていきます。一方で赤ワインはブドウの皮や種はそのままにしてジュースを絞りだし、発酵させていきます。種に含まれるタンニンが苦味をだし、皮から色素がでて赤い色になります。 このように原材料と製法の違いがワインの色と味の違いになっていきます。 ロゼワインとは? ではロゼワインとはどのようなワインでしょうか? 一言でいうと白ワインと赤ワインの原材料、製法を組み合わせたものになります。 その組み合わせからできるロゼワインは大きく4つのパターンになります。 1.原材料は赤ワインと同じ黒ブドウで、製法を白ワインと同じにする。※ロゼワインの一般的なパターンになります。 2.濃い赤ワインを作るために製造工程にて液体を抽出する。※血抜き、瀉血(しゃっけつ)、などとも言われます。その抽出されたものを発酵させワインにします(セニエ法と呼ばれる手法です)。 3.原材料を「白ブドウ+黒ブドウ」からワインをつくる。※混醸法と呼ばれドイツなどで生産されています。 4.出来上がった白ワインと赤ワイン足していく。※ブレンド法と呼ばれます(禁止地域もあり)。 どんな料理に合うのか? 一般的に魚=白ワイン、肉=赤ワインと覚えている人が多いかもしれません。もちろん、それでもOKです! ですが、ここではワンランク上のペアリングをご紹介します。 それは、単純に肉・魚と分けるのではなく、料理の色合いによってワインを合わせることです。 例えば、魚でも白身の魚と赤身の魚がありますが、白身の魚は白ワインと、赤身の魚は赤ワインと合わせることでワインの選択肢がぐっと増えます。 具体的には、 白ワイン=白身の魚、塩、鶏肉、白豚、クリームシチュー 赤ワイン=赤身の魚、醤油漬け、黒豚、ビーフシチュー などがお勧めです。 ロゼワインには、サーモンや光り物の魚など、ロゼの色調に合わせます。 まとめ これらを表にまとめると以下になります。 ※簡略的にお伝えする為の一般的な製法であり、例外的な事も多数ございますので、予めご了承ください。 ワイン 原材料 製造方法 合う料理 白ワイン 白ブドウ 種、皮を除き発酵 白い料理 赤ワイン 黒ブドウ 種、皮を含めて発酵 赤い料理 ロゼワイン 黒ブドウ 白ブドウ+黒ブドウ 軽く着色後、種、皮を除き発酵 セニエ法 混醸法 ブレンド法 サーモンや光り物など 最後に冒頭のクイズの回答です。 こちらのの料理に合うワインとは? ソムリエからの回答は、 「コクや旨みのある、ある程度色調のはっきりした白ワインがおすすめです。(ロゼもあり)」とのことでした。 ※もちろん嗜好品なので、重要なことは、美味しく楽しく食事していただく事は言うまでもありませんね♪ 聞き手:株式会社セレブール ゼネラルマネージャー 三沢 雄一 ソムリエに訊く
ワインで対談 2018年2月04日 人事評価にレーティングが不要である理由とマネージャーに求められる資質とは – エム・アイ・アソシエイツ松丘啓司さん × セレブレイン高橋敦子 × セレブレイン関伸恭【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第4回ゲストは、エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役社長・松丘 啓司さん。日本における人事の歴史から人事評価をめぐる問題に至るまで幅広くお話を伺いました。聞き手は、セレブレイン代表取締役副社長・高橋 敦子とパートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭が務めます。(上記画像 エム・アイ・アソシエイツ松丘啓司さん(右)とセレブレイン関伸恭) 第4回ゲスト:松丘啓司さん略歴 1986年、東京大学法学部卒業後、アクセンチュアに入社。1992年にチェンジマネジメントグループの立ち上げに参画後、一貫して人事・組織変革のコンサルティングに従事。ヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任。2005年、人材・組織変革サービスを提供するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し代表取締役に就任。著書に『人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』『ストーリーで学ぶ 営業の極意: 1時間でわかる成功のポイント』など多数。 マネージャーに必要なのは人の可能性を伸ばすピープルマネジメント 高橋:松丘さん、次のお料理をどうぞ。 ソムリエ:甘エビと白イカ、きゅうりと水なすのタルタル仕立てです。ココナッツを効かせたピリ辛のカレー風味に味付けしています。合わせるワインはオーストリアのリースリングです。ちょっと熟成した2010年の旨味がマリアージュすると思いますよ。 松丘:オーストリアもワインの歴史が古いですよね。リースリングというと、ワインエキスパートを取ったときにキューピー人形の香りが特徴だって覚えましたね。 高橋:私はニシンあぶらの香りだと教わりました。 関:へ~! おもしろいですね。 松丘:うん、このリースリングもすばらしいですね。フルーティーで酸味もしっかりしているけど、熟成しているからかまろやかで旨味もすごくあります。 高橋:喜んでいただけてよかった!さすがのコメントですね〜。 松丘:セレブールさんのお店は他にもありますよね。 高橋:はい。全部で5店舗です。コンセプトは違いますが、どの店舗とも、キッチンやサービスの人間も“全員ソムリエ”ですので、マリアージュにこだわっています。全店赤坂にあるので、スタッフ間の横の連携もバッチリです。 松丘:それはいいですね。組織は縦割りになりがちですから。 高橋:そうですね。弊社でもそういう組織課題のご相談はよく受けていますね。どうすれば縦割り組織を変えられるのか、と。 松丘:コミュニケーションですよね。最近、LINE退職やSNS退職といった言葉も聞くようになりました。 関:LINEで退職を告げるということですか? 松丘:ええ。 関:そういう事態に対して人事的にはどのようにアプローチしていけば良いのでしょうか。 松丘:逆に企業でも皆がSNSをどんどん使っていけばいいと思いますよ。SNSで密にコミュニケーションを取り合いながら、お互いに褒め合い、認め合うカルチャーを作っていくのです。 高橋:日々の積み重ねですよね。なかなか褒め合うコミュニケーションを根付かせるのは大変ですが。 関:先ほどレーティングしないというお話を聞かせていただきましたけど、そうなると上司と部下で会話する内容も変わってきそうですね。 松丘:そもそも今まではきちんと時間をとって部下と対話をしていないという企業も多いのではないでしょうか。業務上の会話はあっても、1on1での対話は半期に一度の面談だけ。それも形骸化している……なんてことも多いはずです。 関:マネージャーが部下ときちんと対話できていないわけですね。 松丘:そう。対話って単純に話をすればいいってわけではないですよね。相手を理解すること、仕事に対する考え方や大切にしていること、将来の夢などを理解した上で、部下と向き合い、適切にフィードバックするのが本当の対話なんです。 関:なるほど……。 高橋:松丘さんに相談に来られる企業は、どんな課題を抱えているケースが多いのですか? 松丘:評価制度や現場における上司と部下のコミュニケーションがうまくいっていなくて、でもどうすればいいかよくわからないというようなご相談が多いですね。 関:やはり、マネージャーに対する教育や発想の転換が必要なのでしょうか。 松丘:そうですね。マネージャーに必要なのは、人の可能性を伸ばしていくマネジメント、それをピープルマネジメントと呼びます。ただ、人のマネジメントは難しいですから、一度研修を受けたくらいでは上達しませんね。失敗を繰り返して、そこから学んでいかないと。 関:失敗したら怖くなってしまいますよね。 松丘:研修を受けて実践しての繰り返しですね。よく、うちのマネージャーにはそんなスキルがないから無理だと言われるのですが、そうではないのです。マネージャーの力量を高めるための研修ですから、はじめからスキルは高くなくても大丈夫です。研修を受けて実践しながら高まっていくものなのです。 働き方改革の実現には社員が自律的に働ける仕組みづくりが必要 高橋:いよいよメインディッシュですね。 ソムリエ:香鶏という烏骨鶏に代表される地鶏のもも肉を使い、皮をパリッと焼き上げました。そこにポルチーニ茸、そしてトリュフをたっぷりと削っています。合わせるワインはブルゴーニュのサントネー村の赤ワインを。1999年と熟成したものをご用意しました。 松丘:これはおいしい! 鶏はやはり皮が一番おいしいですね。熟成したブルゴーニュのキノコっぽい香りがまた、トリュフやポルチーニ茸ととても合っています。 高橋:ふふ。素敵な対談ですよね(笑)。 関:松丘さんは普段、どのようなお食事を? 松丘:実はもう20年以上、週に複数回は寿司を食べているんですよ。 関:20年ですか! 高橋:お寿司と決めている理由があるんですか? 松丘:単純に好きだからですね。といっても予約が取れないような有名店ではないですよ。仕事が終わって今から行きたいなと思いつくことが多いので、かなり前から予約しないと入れないような店はNGです。 高橋:お寿司だと合わせるお酒は……。 松丘:だいたい日本酒ですね。ただ、寿司屋でも握りは食べないんですよ。バーに行く感覚というか、飲みに行っているので。それに、注文もしないんです。自動的に出てくるお店がいいですね。余計なことを考えたくないんです。 関:そうなんですね。自動的に出てくるとなると松丘さんの好みを把握していないと難しいですね!お仕事が終わった後の寿司屋というお話が出てきたところで、働き方改革についてもぜひ伺いたいです。働き方改革は今トレンドで、残業時間の削減から在宅勤務、テレワークなどありますが、そのあたりの取り組みについてはどうお考えですか? 松丘:在宅勤務やテレワークのメインとなる考え方って、働く時間と場所を縛らないということですよね。だけど、一人ひとりがそれをコントロールするためには、自律的に働けないとそもそも成り立たないわけです。 関:全職種に適用するのは簡単ではないですし、難しい側面はありますよね。 松丘:先ほどの目標管理の話と同じなんです。全社目標が部門目標になり、チーム目標になって個人の目標になる。個人からすると、仕事というのは上から評価基準と一緒に下りてくるものになってしまうんですね。だから受け身になってしまう。自分はこれがやりたいんだとか、こういうことに貢献するんだとか、そういう自発的な部分がないと自律はありえません。 関:たしかに与えられた仕事ではなく、自分で目指す方向を決めて主体的に取り組む方が仕事のパフォーマンスは上がりますね。 松丘:結局、上から下りていくと縦割りになってしまうんです。そうすると、他の人がどのような目標を持って、どこに向かって仕事をしているのかわからなくなってしまう。この人は今、こんな目標の達成に向けてがんばっているんだなということがわかれば、縦割りの問題も解決します。このあたりはHRテクノロジーを活用することで解決できそうな気がしています。 高橋:たしかにテクノロジーでも解決に期待が持てそうですね。 松丘:弊社でリリースを予定しているパフォーマンスマネジメント支援アプリもそういった機能を持っています。一人ひとりの目標を公開して、上司のこともわかるし、コメントもできます。 関:モバイルですか? 松丘:モバイルですね。でないとノリが重くなるんですよ。拝啓ますます……みたいに(笑)。もっと軽いタッチじゃないと。 関:PC版も? 松丘:もちろんです。PCでしかできないこともありますからね。これがあれば、どのチームがコミュニケーション活発だとか、どことどこがコミュニケーションできているかといったことまでわかるんですよ。 高橋:楽しみなアプリですね!リリースを楽しみにしています。本日はありがとうございました。 エム・アイ・アソシエイツ株式会社より2018年2月1日にリリースされた日本初のパフォーマンスマネジメント支援アプリ『1on1navi』についてはこちらのURLをご覧ください。 https://1on1navi.com/ 今回のお店 セレブール 2001年オープン。赤坂の隠れ家的ワインレストラン&バー。シェフを始め、スタッフは全員がソムリエの資格を持っており、フランスを中心とした銘醸ワインが約400種類そろっています。フレンチをベースにした創作料理とのマリアージュをお楽しみください。 <本日のワインと料理> 本日お楽しみいただいたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。 甘エビと白イカ、夏野菜のタルタル グリーンカレー風味 甘エビ、白いか、きゅうり、水なすといったバラエティに富んだ食材をタルタル仕立てに。ねっとりとした食感と少しピリ辛な味付けのコントラストが楽しめる一皿。添えられたパクチーの香りが良いアクセントになっています。 プラーガー・リースリング・ヴァッフストゥム・ボーデンシュタイン・スマラクト2010 オーストリア、ドナウ川沿いのヴァッハウの白ワイン。リースリングらしい酸味を持ちながらも、7年熟成を経たことでかなりまろやかになっています。桃や杏のようなフルーティーな香りと、からみつくような旨味が特徴です。 蔵王香鶏 もも肉のロースト 茸のヴァンジョーヌソース 蔵王の地鶏のもも肉をローストし、ポルチーニ茸のヴァンジョーヌソースをたっぷりと。ヴァンジョーヌとはフランス・ジュラ地方の黄ワインのこと。ジュラの郷土料理に、さらにサマートリュフを添えたスペシャルな一皿です。 サントネー 1999 18年の熟成を経たブルゴーニュ・サントネー村の赤ワイン。まだまだ果実味も残しつつ、キノコや土といった熟成による香りが立ち上り、すばらしい複雑味を備えています。まさに今が飲み頃のピーク。 取材を終えて ライター・カメラマンの山田井です。今回のゲストはエム・アイ・アソシエイツの松丘社長。著書『人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』で語られているレーティングの問題点をわかりやすく解説していただくことができました。 また、ワインエキスパートの資格もお持ちということで、ワインについても会話に花が咲いていたようです。 セレブールのお料理とワインはさすがという他なく、まさに完璧としかいいようのないマリアージュでした。シャンパーニュから始まり、オーストリアの白、熟成したブルゴーニュの赤という流れは、ワインの奥深さ、世界の広さを感じられる流れだったと思います。 やはり特に感動したのはサントネーの1999年。熟成を経た状態の良いワインだけが放つうっとりとするような芳香は、まさにフィネスという言葉がふさわしい高貴さが感じられました。こうしたワインを完璧な状態とサーブで味わえるわけですから、なるほど、セレブールが長年ワインラヴァーから愛される理由もよくわかるというものです。
コラム 2018年1月11日 HR Techサービスが組織・人事そして経営にもたらす変革 HR Techのサービスは多岐にわたり、採用やタレントマネジメントをはじめ、人事評価、給与計算、勤怠管理、ラーニングマネジメント等さまざまな領域のサービスが提供されています。前回のコラムで紹介した”HR Technology Conference & Exposition”のような大規模イベントが世界各地で開催されており、その規模も年々大きくなっています。国内でもテクノロジーを活用した新しいサービスが増えており今後の組織・人事のあり方について避けては通れないテーマとなってきました。 そこで今回は、HR Techサービスが組織・人事にもたらす変革についてご紹介します。 1.人事データの一元化・分析 2.オペレーション業務効率化 3.組織活性化
ワインで対談 2018年1月11日 人事評価にレーティングが不要である理由とマネージャーに求められる資質とは – エム・アイ・アソシエイツ松丘啓司さん × セレブレイン高橋敦子 × セレブレイン関伸恭【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第4回ゲストは、エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役社長・松丘 啓司さん。日本における人事の歴史から人事評価をめぐる問題に至るまで幅広くお話を伺いました。聞き手は、セレブレイン代表取締役副社長・高橋 敦子とパートナー HR Techコンサルティング事業担当・関 伸恭が務めます。(上記画像 右からエム・アイ・アソシエイツ松丘啓司さん、セレブレイン関伸恭、高橋敦子) 第4回ゲスト:松丘啓司さん略歴 1986年、東京大学法学部卒業後、アクセンチュアに入社。1992年にチェンジマネジメントグループの立ち上げに参画後、一貫して人事・組織変革のコンサルティングに従事。ヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナー、エグゼクティブコミッティメンバーを歴任。2005年、人材・組織変革サービスを提供するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立し代表取締役に就任。著書に『人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』『ストーリーで学ぶ 営業の極意: 1時間でわかる成功のポイント』など多数。 なぜ日本は人事評価で“レーティング”し始めたのか 高橋:こんばんは、松丘さん。本日はいろいろとお話を聞かせてください。 松丘:こんばんは。こちらのお店には以前、伺ったことがあります。 高橋:そうでしたね。今回のお店であるセレブールはオープンしてもう17年も経ちます。松丘さんはワインエキスパートの資格を持っていらっしゃるとお聞きしているので、ぜひ今夜はセレブールのワインとお料理を楽しんでいってください。 松丘:とても楽しみです。 関:ではお話の前にまずは乾杯しましょう! 松丘:シャンパーニュですか。……うん、おいしいですね。 ソムリエ:LALLIER(ラリエ)というシャンパーニュで、ピノ・ノワールが多く使われています。ピノ・ノワールが多いと濃い味になりがちですが、ファーストタッチがすごく繊細です。 松丘:本当ですね。それにしっかりとしたコクがある。 ソムリエ:まだ日本に入り始めてそれほどたっていないのですが、これから伸びてくるシャンパーニュだと思いますよ。 関:ではさっそくお話を聞かせてください。松丘さんは以前、『人事評価はもういらない 成果主義人事の限界』という著書を出版され、人事業界でも話題になりました。とても刺激的なタイトルですが、どんな思いで執筆されたのですか? 松丘:日本の企業に問題提起したかったのです。 関:といいますと……。 松丘:タイトルにもある「人事評価」ですが、アメリカでは「パフォーマンス・マネジメント」と呼ばれています。個人のパフォーマンスを高めることが、組織全体のパフォーマンスを高めることにつながる、そのために人事評価を組み込んでいこうという考え方ですね。ところが、実際のところはアメリカも日本も”評価”がパフォーマンスの向上につながっていないと感じている会社が多いのです。完全に評価をなくそうというわけではありませんが、目標管理や評価といった当たり前に思っているものが本当に必要なんでしょうかと問題提起をしたかったのです。 高橋:たしかに人事評価は給与を決めるためだけにやっている会社も多いですよね。人事評価を育成やパフォーマンス向上のために活用できている会社は残念ながらあまり多くはありません。 関:そもそも現在多くの企業に採用されている人事評価制度が日本で出てきたのは、成果主義が叫ばれ始めた90年代後半ごろだったと思います。それ以前の日本はどうだったのでしょう。 松丘:以前の日本はいわゆる年功序列・終身雇用制度だったので、皆が同じように出世していったのです。だから評価をして差をつける必要もありませんでした。もちろん、そうはいっても出世には差がついてくるのですが、レーティングをしなくてもだいたい誰が出世するかはある程度わかっていたわけです。 関:なぜ、そこからレーティングするという流れに変わってきたのですか? 松丘:戦後の日本は高度成長期が続いていました。それが、70年代後半くらいから低成長になり、これではまずいということでカンフル剤的な施策があり、バブル経済が生まれたんですね。その後、バブルが崩壊し、同時に90年代前半からグローバル・エコノミーが急拡大してきました。 高橋:国境を超えてお金や情報が動くようになってきたわけですね。日本企業もグローバルでビジネスを展開するようになった頃ですね。 松丘:ええ。ところが日本はそれまで年功序列・終身雇用制度だったので、人件費構造が高かったわけです。終身雇用制度における人件費とは、つまり固定費です。欧米企業はご存知の通り、景気が悪くなると平気で解雇されますよね。そうしたグローバルベースのビジネスでは、これまでのやり方では勝てないと言われ始めたのです。 関:つまり、日本経済が低迷して企業がコストダウンを迫られるなか、人件費を変動費化して限られた原資を成果に応じて配分しようという試みだったと。 松丘:それが直接的な要因だと思います。当時の日本企業にとって、国際競争で同じ土俵に立つという意味でそれなりの効果はあったでしょう。ただ、人件費を削減すると言ってしまうのは体裁が悪いので、成果に応じて報いるのが公平だというレトリックを用いたわけですね。 人事評価においてレーティングが不要である理由 高橋:では最初のお料理をどうぞ。 ソムリエ:先ほどのシャンパーニュに合わせて、アミューズの盛り合わせをご用意しました。右手から干し鱈をじゃがいもと一緒にペーストしたブランダード、ブリア・サヴァランというヨーグルトを加えたフレッシュチーズと季節の桃、そして黒いちじくと生ハムを合わせたものです。 松丘:おしゃれですね。……うん、シャンパーニュにもよく合います。 関:松丘さんが一番お好きなワインは? 松丘:難しい質問ですね。やはりフランスは好きです。ブルゴーニュとか。でも家で飲むにはちょっと高いので、オーガニックワインをもっぱら飲んでいます(笑)。 高橋:私も同じです。オーガニックワインの最近の進化はすごいですよね。 関:ワインやお酒は毎日飲まれるのですか? 松丘:ええ。ほぼ毎日飲みますね。昔は休日の昼間に飲んだりしたこともありましたが、今はもう疲れちゃうから飲まないですね(笑)。 関:さて、お話の続きですが、企業では目標を立てて半期に一度、または年に一度評価をするという仕組みを取り入れているところが多いと思います。松丘さんのお考えでは、そういった企業は今後どういう仕組みでやっていくことが求められるのでしょう。 松丘:そうはいっても評価がなくなるわけではないんですよ。昇進や昇格、ボーナスなどは決めないといけないわけですから。私が言いたいのは、評価がなくなるわけではなく、レーティングしないということなんです。 関:レーティングというと、S・A・B・C・Dや1・2・3・4などで評価をつけることですよね。それをしない評価といいますと……。 松丘:今はまだ短期の業績をもとにレーティングを行って、それを昇格と密にリンクさせている会社が多いのですが。たとえば年次評価で3年連続A評価以上なら昇格とかね。 松丘:このやり方は明確なルールがあるので、一見すると公平なように見えます。しかし、そうではないんです。昇格というのはどうやって決めるべきかというと、本来的には今よりも一つ上の役割を果たせる能力やリーダーシップがあるかどうかで判断されるべきなんです。短期評価でAを3回とったからというレーティングで決めるべきものではありません。 高橋:役割を果たせるかどうか、ですか。 松丘:もちろん、能力があるかどうかを判定する際に実績での検証は必要です。しかし、それはレーティングである必要はありません。そこは切り離す必要があるのです 関:給与についてはどうなりますか? 松丘:給与の仕組みは会社によって違いますが、基本給はだいたい等級と連動しています。対してボーナスは毎期の業績によって決まります。つまり、基本給を決めるのにレーティングは必要ないのです。 関:たしかにその通りですね。 松丘:そうするとレーティングはボーナスの配分を決めるためだけに使うことになります。多くの会社は相対評価で決めますよね。 関:1.2とか0.8とかに調整して決める方法ですよね。 松丘:ええ。多くの会社では目標の達成度で判断することが多いですよね。しかし、それは最初から達成しやすい目標しか立てなくなるという問題をはらんでいるのです。これは成果主義の問題として以前から言われていたことです。 関:なるほど……。 松丘:そもそも何が評価されるべき成果なのか、その基準自体も変化しています。売上目標を達成したから評価されるべきなのか、それとも売上目標は達成できなかったけれど、すばらしいチャレンジをしてイノベーションにつながったなら、それは評価するべきではないのか。これを単純に2:6:2とかで配分すると、柔軟性を欠いてしまうのです。また、社員としては他の人と同じ程度の成果を出していればとりあえず真ん中の6には入れるので、他の人を見ながらほどほどにやっていればいいという意識になってしまいます。 高橋:日本人らしい思考ですよね。 関:海外ではそういった問題はないのですか? 松丘:欧米だと人材流動性が高いですから、たとえば「あなたはCです」のようにレーティングすると辞めてしまうんです。それで競合他社に移ってしまったりする。かといって「なぜCなのか」ということを説明して納得してもらうのも大変です。 関:そこに労力を使いたくないですよね。 松丘:実は脳科学の研究で、レーティングをするとマインドセットが「自分はダメだ」という方に向いてしまうという結果が出ているんです。人が成長するためには前向きなマインドセットになる必要があるので、やはりレーティングは問題があるのです。 前編では、日本の人事評価の歴史を経済的な視点から振り返り、さらに人事評価におけるレーティングの問題について詳しく語っていただきました。 次回、後編では現場の課題をどう解決していけばいいのかというお話に加えて、トレンドでもある働き方改革についても見解をお聞きします。 もちろん、お料理とワインもすばらしいものが登場! メインディッシュと、それに合わせる最高のワインは何が選ばれるのか……。こちらもお見逃しなく! 今回のお店 セレブール 2001年オープン。赤坂の隠れ家的ワインレストラン&バー。シェフを始め、スタッフは全員がソムリエの資格を持っており、フランスを中心とした銘醸ワインが約400種類そろっています。フレンチをベースにした創作料理とのマリアージュをお楽しみください。 <本日のワインと料理> 本日お楽しみいただいたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。 白桃とフレッシュチーズのサラダ 干し鱈をじゃがいもと一緒にペーストしたブランダードは、フランス・ラングドック地方の郷土料理。ブリア・サヴァランというヨーグルトを加えたフレッシュチーズと季節の桃、そして黒いちじくと生ハムを合わせたアミューズの盛り合わせ。見た目、香り、食感のすべてで楽しめる一皿です。 シャンパーニュ・ラリエ、R.012 ブリュット 秀逸なピノ・ノワールを生み出すアイ村のシャンパーニュ。ピノ・ノワールの比率が高めでしっかりとした骨格を持ちながらも、口当たりはなめらかで繊細。柑橘系の香りと白い花のアロマが感じられるバランスの良いワインです。
コラム 2017年11月09日 コンサルタントが見たラスベガスで開催のHRテクノロジーカンファレンス最新事情 ~HR Tech Conference & Expo 2017 in Las Vegas~ こんにちは。セレブレインのHRテクノロジーコンサルタントの加藤雄平です。 2017年10月10日~13日の4日間、アメリカのラスベガスで世界最大級の人事テクノロジ―展示会”HR Technology Conference & Exposition” (以下HR Tech Conference)がありました。今年で20年目を迎える大イベントに私も参加してきました。 年々日本国内でも盛り上がりを見せるHR Tech領域ですがアメリカにおけるスケールはその何倍も大きく終始発見の連続でした。本イベントの開催日程は4日間、HR Techに関わるスタートアップ企業から世界を代表する企業まで約350社がブースを出展し多数のセミナーやセッションが開催されました。 一口にHR Techと言ってもカバー領域は多種多様で、パフォーマンス、ラーニング、エンゲージメントサーベイ、タレントマネジメント、ピープルアナリティクス、社員間コミュニケーション、採用支援、勤怠・就業、報酬管理等合計20以上の領域のサービスが集結していました。 そのような最先端のHR Techサービスがずらりと並ぶ貴重なイベントで経験したことを3つご紹介いたします。
ワインで対談 2017年10月29日 米国のHRテックと日本企業の意外なつながりとは – タレンタ石橋慎一郎さん × セレブレイン高城幸司【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第3回ゲストは、株式会社タレンタCEO・石橋愼一郎さん。ベンチャー支援を始めた経緯や、同社が提供するデジタル面接プラットフォーム「HireVue」について、セレブレイン代表取締役社長・高城幸司と対談しました。 第3回ゲスト:石橋慎一郎さん略歴 IBM、オラクルをはじめとする著名なIT企業において上級管理職を歴任した後、創設時からのパートナーであるサンブリッジ株式会社においていくつもの新規事業を立ち上げてきた。日本におけるテクノロジービジネスの発展を30年以上に亘ってリードし、現在はタレンタ株式会社のCEOとしてHRテックの普及に注力している。 アメリカのHRテックは、かつての日本企業のマネジメントスタイルをベースに開発されている 高城:ここまで、サンブリッジを創業してベンチャー支援をされてきた経緯や、タレンタで展開するサービスについてお話を伺ってきました。ところで、Facebookを拝見したのですが、石橋さんはプライベートでもアクティブですよね。ゴルフとか登山とかヨットとか……。 石橋:今は山に凝ってますね。もともとはゴルフをやっていて、体幹を鍛えるために山に登り始めたらすっかりそっちに夢中になってしまって。体力をつけるために有酸素運動をしようとジョギングを始めましたし、足腰に負担がかからないようにロードバイクを買って自転車もやっています。 高城:いやー、すごいですね。山にはどなたと? 石橋:最近はモンベルとかクラブツーリズムとかのツアーに一人で参加してますよ。レベルがいろいろあって、まだまだ先は遠いです。 高城:ぜひゴルフもまたやりましょうよ。タレンタとセレブレインでゴルフカップを。 石橋:いいですね! 高城:お話を戻しますが、やはり人事の業界ではアメリカが進んでいますよね。日本でもようやくHRの世界にテクノロジーを活用する重要性が認識され始めていますが、石橋さんから見てどんな状況だと思われますか? 石橋:やはりアメリカは進んでいると思います。HRテクノロジーベンダー含め人事政策を支援するさまざまなベンチャー企業が出てきていますので、良いサービスは我々も日本で展開したいと考えています。 高城:まだまだ日本に入ってきていない新しいサービスがたくさんあるということですね。 石橋:一つ、面白い話をしましょう。20数年前、ジャパン・アズ・ナンバーワンといって日本の経済状況が良かった時代がありました。その経済を支えている企業が社員に対して行っていたトリートメントがかなりすばらしいものだったのです。有能な人材をそれなりのポジションにつけて、終身雇用のエンゲージメントを与えることでモチベーションを高めていました。じゃあそのとき、アメリカはどうしていたか。 高城:ふむ。 石橋:アメリカは日本を見て、一生懸命に研究していたのです。そして、日本企業がやっていたことを彼らはシステム化しました。実は今、我々がアメリカから学んで日本に持ってきている製品の多くが、昔の日本の大企業がやっていたことをシステム化したものなんですね。 高城:うーん、なるほど。アメリカ企業のHRテック関連製品が実現しているものは、実は日本人がかつて実践していたことなのですね。 石橋:そうなんです。では日本とアメリカの違いは何なのかというと、アメリカはそういうものをシステム化してインフラを作るのが非常にうまいんですね。 高城:それならHRテックの考え方なんかは日本人にも親和性が高そうですね。 石橋:使いこなすことについて日本人は長けていますからね。ただ、システムという切り口でいうと、やはり3~5年はアメリカに遅れを取っていますね。 ブレイクスルーはコーチングにあり! HRテックで「Work Happy!」の実現を ソムリエ:さあ、メインディッシュです。ポークスペアリブに、ドンキー・アンド・ゴートのグルナッシュを合わせましょう。ここはもともとIT業界で働いていた夫婦が立ち上げたワイナリーで、クオリティは非常に高いです。 石橋:天国ですね、今日は(笑)。このワインは甘めのポークスペアリブにぴったり合いますね。日本だと甘めのスペアリブってあまり食べないですよね。 高城:ナチュールワインということもあって、普通のグルナッシュのイメージよりはさっぱりしていますが、やはり肉との相性は抜群ですね。普段はどんなワインを飲まれるのですか? 石橋:個人的には赤ワインが好きですが、周りに白好きが多いので、シャンパンからスタートして白、赤みたいな流れで飲むことが多いですね。 高城:いいですね! さて、メインディッシュをいただきながらお話の続きを。現在、アメリカではHRテックはどんな時期に入っているのでしょう。 石橋:まだまだ成長期ですよ。びっくりするようなものが次々に生まれています。たとえばスーパーの出入り口にボタンがあって、「良かった」とか「まあまあ良かった」みたいな感想を押すシステムなんかがあるんです。 高城:へえー! 面白いですね。 石橋:こういうのって日本人だとあまり考えないですよね。超多民族国家のアメリカだからこそ、システム化して合理的にお客さんの気持ちを汲み取ろうとするのかもしれません。 高城:しかし、日本からそういったサービスが生まれないというのはなぜなんでしょうね。日本発というのは難しいのでしょうか。 石橋:昔から日本のベンチャーはアメリカで成功しているモデルを日本に持ち込むというのが主流でしたからね。 高城:タイムマシン戦略ですね。日本はガラパゴスなんて言われますが、今後ブレイクスルーするとしたらどういうところが切り口になるでしょう。 石橋:難しい質問ですね。ブレイクスルーといっていいかはわかりませんが、コーチングをどうインフラで活用するのかが切り口になるかもしれません。 高城:というと? 石橋:たとえば新卒で採用した社員が3年で3割辞めるという話があります。それは本人の資質、組織の問題、ビジネスモデルの問題などいろいろな理由があるわけですが、かなりの部分を占めているのが上司との関係性なんですね。コミュニケーションをとって、社員のモチベーションを高く保てるかが重要なんです。 高城:これまではそういうものは仕組みとは別の部分で担保されていたと思いますが、今はなかなかそうもいかないですよね。 石橋:そうなんですよね。課長や部長や社長はタレントマネージャーそのものなんだけど、意外とタレントのマネージができていない。だからこそHRテックで仕組みを作っていくのが重要なんです。よくなでしこジャパンW杯優勝した佐々木則夫監督のことをサーヴァントリーダーといいますが、そういうマネジメントスタイルを実行するためにもHRテックは必要だと思いますね。 高城:石橋さんの今後の目標はどんなことですか? 石橋:タレンタ社は「Work Happy!」というビジョンを掲げています。ハッピーというと幸せ感ととらえられがちですが、僕が思うハッピーはウェルビーイングの世界なんです。つまり、感情としての幸福だけでなく、自分が健康であること、家族が健康であることです。そういうところまでいかないとハッピーとはいえない。アメリカのHRテックを見ていても、やはりウェルネスの領域まで広がってきていると思います。そういう視点で見ると、タレンタ社はすごく裾野が広い面白い会社にしていけるんじゃないかという感覚がありますね。 高城:気持ちの面だけでなく、自分や周囲の健康まで含めて「幸せに働く」ことだというのはすごく納得がいく世界観ですね。ぜひ一緒にHRテックを盛り上げて、「Work Happy!」を実現できたらと思います。本日はありがとうございました。 石橋:こちらこそ、ありがとうございました。 今回のお店 あじる亭カリフォルニア 地下鉄赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワイン専門ダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類以上の品揃え。カリフォルニアキュイジーヌを意識した創作料理がワインと絶妙にマリアージュします。 <本日のワインと料理> 本日お楽しみいただいたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。 ポークスペアリブ あじる亭カリフォルニア屈指の人気商品。ジューシーで柔らかく、ボリューム満点のスペアリブを甘口のソースでガツッと食べるアメリカンな一皿です。 ドンキー・アンド・ゴート グルナッシュ サンフランシスコのIT企業で働いていた夫婦が新たな挑戦として立ち上げたワイナリーのワイン。フランス・ローヌで技術を学び、2001年からワインを作り続けています。グルナッシュといえばどこか田舎っぽいイメージがあるかもしれませんが、自然派ワインということもあってか、ドライかつさっぱり。脂の多くない肉料理にマッチします。 取材を終えて ライター・カメラマンの山田井です。タレンタの石橋社長は日本のIT業界黎明期からベンチャー支援を続けてこられた方。投資家としてもプレーヤーとしても活躍されているからこその視点で、人事やテクノロジーの現状をお話ただきました。 食事についてもかなりのグルメということで、あじる亭カリフォルニアのお料理とワインをとても楽しまれていた様子。ご用意いただいた品々はどれも完璧なマリアージュで感動しました! どれも良かったのですが、やはり大人気のポークスペアリブは絶品でしたね。ローヌのグルナッシュも合うと思いますが、アメリカのグルナッシュ、しかも自然派ワインということで、また違った雰囲気の面白い組み合わせでした。 今回のマリアージュはどれも鉄板ですので、あじる亭カリフォルニアを訪れたらぜひ一緒に注文してみてほしいですね。
ワインで対談 2017年10月19日 米国のHRテックと日本企業の意外なつながりとは – タレンタ石橋愼一郎さん × セレブレイン高城幸司【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第3回ゲストは、株式会社タレンタCEO・石橋愼一郎さん。ベンチャー支援を始めた経緯や、同社が提供するデジタル面接プラットフォーム「HireVue」について、セレブレイン代表取締役社長・高城幸司と対談しました。 第3回ゲスト:石橋愼一郎さん略歴 IBM、オラクルをはじめとする著名なIT企業において上級管理職を歴任した後、創設時からのパートナーであるサンブリッジ株式会社においていくつもの新規事業を立ち上げてきた。日本におけるテクノロジービジネスの発展を30年以上に亘ってリードし、現在はタレンタ株式会社のCEOとしてHRテックの普及に注力している。 石橋氏がサンブリッジを創業し、ベンチャー投資を始めた理由 高城:石橋さん、ようこそいらっしゃいました。何でも石橋さんはかなりのグルメだとか。 石橋:食事するのは大好きですね。和食も洋食も、B級グルメから三ツ星まで、僕ほどカバーしている人はいないと自負しているくらいです(笑)。 高城:それはすばらしい! 今夜はぜひカリフォルニアのワインとお食事を楽しんでいただきながら、石橋さんのこれまでのご経歴や日本の人事業界についてお話を伺えたらと思っています。 石橋:こちらこそよろしくお願いします。 高城:石橋さんはIBMやオラクルでプロダクトマネージャーやマーケティング本部長を務められた後、サンブリッジを創業して日本のベンチャーをずっと支援してこられましたよね。そういった取り組みがまさに今花開いているわけですが、そもそもなぜベンチャー投資業務に関する仕事をされることになったのですか? 石橋:サンブリッジは1999年に、日本オラクルの代表だった佐野さんや日本オラクル初代代表のアレン・マイナーと一緒にスタートした会社です。当時、日本のITベンチャーの数は非常に少なかったので、もっと活性化していきたいという思いが背景にありました。 高城:当時からアメリカではシリコンバレーを中心にベンチャー企業が次々に生まれていましたよね。日本との違いは何だったのでしょう。 石橋:シリコンバレーは成功した人がエンジェル投資家になり、次の人に投資するというエコシステムが出来上がっていたからです。そのやり方を日本に持ってこようという発想がサンブリッジのビジョンでした。インフラ、マーケティング営業支援、技術支援という三位一体の支援をすることで、どんどんITベンチャーを成功させてEXITし、リターンを得るというビジネスモデルだったのです。余談ですが……サンブリッジという社名は、日出ずる国としての日本と戦後の日本にとって太陽のような存在だったアメリカ、二つの太陽を結びつけるという意味でサン(太陽)ブリッジ(橋)と名付けました。 高城:そんな由来があったのですね! デジタル面接プラットフォーム「HireVue」は企業にどう活用されているのか 高城:最初のお料理とワインが来ました。 ソムリエ:ベーコンとホワイトマッシュルームをたっぷり入れたほうれん草のサラダです。合わせるワインは最近カリフォルニアでも流行っているナチュールワイン。ブロックセラーズという作り手の白ワインをご用意しました。 石橋:ありがとうございます。……うん、これはおいしい。カリフォルニアテイストですね。ワインのミネラル感がほうれん草の鉄分によくマッチします。 ソムリエ:マルサンヌというぶどう品種を90%使ったワインで、飲みごたえがありますよね。 石橋:カリフォルニアには面白いワインが多いですよね。実は最近、ワインスクールに通っているんですよ。 高城:えっ、そうなんですか。では今日はぜひカリフォルニアのワインを楽しんでいってください。さて、お話を戻しますが、ベンチャー支援を行う上では”目利き”が重要になってくると思います。何かポイントはあるのでしょうか? 石橋:いくつかあります。まず製品そのものの技術バックグラウンドがしっかりしているか、それから優秀な人材がいるか、そして社長がどんな資質の人なのかです。芯はしっかりしているけれど、人の言うことにも耳を傾けられるかどうか?など。そういうところも成功できる要素のひとつですね。 高城:なるほど。確かにそうですね。石橋さんが特に「人」に着目してビジネスを展開されるようになったのはいつ頃からでしょうか。 石橋:人を意識し始めたのはサンブリッジの創業から間もない2000年前半くらいでしたね。リーダー採用を手伝ったり、マーケティング支援をしたりしていたのですが、会社が成長するとそれに伴う”軋み”が出てくることがわかったのです。組織をどう運営するのか、人の評価をどうすればいいのか。そういった課題を解決するために開発された製品が、社員のスキルを可視化する「3Rings」です。 高城:タレンタでは他にも360度多面評価システムの「SilkRoad Performance」やデジタル面接プラットフォームの「HireVue」を提供されていますよね。 石橋:今メインでやっているのは「HireVue」で、これは採用面接をウェブの録画やライブ形式で行うというプラットフォームです。アメリカでもすでに700社くらいの企業が採用しており、大企業も数多く使っています。たとえば某IT企業がAIの研究者をグローバルで採用する際、「HireVue」で数千人を面接し、そこを通過した人をニューヨークに呼んで対面で面接するという方法をとっている事例もあります。 高城:日本ではそういったやり方は受け入れられるのでしょうか。 石橋:時期尚早かなと思ったのですが、ミレニアル世代の若者はスマホで育っていますから、デジタルに対する恐怖感はないようですね。デジタル面接でも自分の意見なりをしっかりと主張できています。すでに大手企業にも「HireVue」を採用いただいているんですよ。ユニークな使われ方をしている企業も多く、とあるサービス業の大手企業では設問の代わりに「ケーススタディ」をHireVueで実施したりしています。設置した具体的なシチュエーションに対して、どういうリアクションや言葉遣い、表情で対応をするかを見て判断するそうです。 高城:それは面白く興味深いですね。デジタル面接ならではですね。他にデジタル面接のメリットはどのようなところにありますか? 石橋:映像の記録が残るので、より多くの人によって判断できます。公平性が高く、その場で議論しながら評価出来るので、ばらつきがなくなるのです。 高城:実は私としては最初、採用ツールとしてのデジタル面接には懐疑的な部分があったんですよ。採用って人がやるべきでしょうと。でもあっという間に普及してきて、分野によっては採用のデファクトスタンダードになるのかもと感じています。業務効率化という点でも、候補者にとっての利便性からも画期的ですよね。 石橋:その意味では大きいですね。会場を用意しなくていいし、応募者と面接官のスケジュールを合わせなくてもいい。わざわざ遠くから来てもらうことがないので、双方にとってメリットが大きいです。 高城:今後は面接全体が置き換わっていくのでしょうか。 石橋:今のところは履歴書やエントリーシートなどのペーパーワーク、または一次面接までを効率化しているのが現実ですが、今後はもっと範囲は広まると思います。 タレンタが提供するサービスはすべて連動している 高城:二皿目のお料理をいただきましょう。 ソムリエ:スクランブルエッグ 雲丹のカプチーノ仕立てにオレンジワインのマサイアソン リボッラ・ジャッラを合わせます。 石橋:ほう、オレンジワインですか! ソムリエ:白ワインを赤ワインの製法で作るもので、ギュッとつまった旨味が雲丹の濃厚さとよく合います。リボッラ・ジアッラという品種はもともとイタリアの品種なんですが、それをカリフォルニアでオレンジワインにしたものです。 石橋:いや、これは本当にすばらしいですね。 高城:石橋さんはお好きなお料理のジャンルは? 石橋:京味系の和食が多いですね。走りと旬と名残の3つを楽しんでいますよ。 高城:ではお話に戻りましょう。御社では今現在「HireVue」や「SilkRoad Performance」、「3Rings」と多様なサービスを展開されていますが、全体としてはどんなビジョンを描いてらっしゃるのですか? 石橋:実はこれらのツールはすべて連動しているんです。既存の社員に対してのHRソリューション製品と採用のソリューション製品は分断されていることが多いのですが、経営者から見ると本来はつながっているべきなのです。 高城:といいますと? 石橋:どういう社員を入れるのかは既存の社員を見て判断しないといけませんし、どういう社員教育を行うべきなのかは、どんな社員が入ってきたのかによっても変わります。また、どういう教育をしてどのように社員を育てるのか、その結果によって次にどういう社員を採用するのかが決まります。 高城:なるほど。採用面接から社員のスキル可視化、そして360度評価……そのすべてをタレンタのサービスがサポートしてくれるというわけですね。 前編では、サンブリッジを創業してベンチャー支援を始めたきっかけから、”人”に注目して数々のHRテックサービスを手がけることになった経緯をお話いただきました。 次回、後編ではアメリカが先行するHRテックが実はかつての日本企業の取り組みと深い関係があったという興味深いお話や、日本が今後HRテックでブレイクスルーを迎えるにはどうすればいいのかという見解などをお聞きします。 お料理の方はいよいよメインディッシュが登場! あじる亭カリフォルニアを代表する肉料理とカリフォルニアワインのマリアージュをお楽しみに! 今回のお店 あじる亭カリフォルニア 地下鉄赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワイン専門ダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類以上の品揃え。カリフォルニアキュイジーヌを意識した創作料理がワインと絶妙にマリアージュします。 <本日のワインと料理> 本日お楽しみいただいたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。 ほうれん草のサラダ ベーコンとマッシュルームをたっぷりのせたカリフォルニアで大人気のほうれん草のサラダ。日本ではあまり見かけない生のほうれん草の滋味に身体が喜ぶ一皿です。 ブロックセラーズ ラブ・ホワイト カリフォルニアセントラルコーストで栽培されるマルサンヌとルーサンヌを使用した自然派ワイン。フルーティーでさわやかな味わいながら、しっかりした飲みごたえもあり。奥に感じるミネラル感がサラダなどにもマッチする他、単体で飲んでも楽しめます。 スクランブルエッグ 雲丹のカプチーノ仕立て 濃厚な雲丹の香りと風味を楽しめる一皿。とろけるような舌触りと口いっぱいに広がる香り、そしていつまでも余韻として残る深いコク。五感すべてで楽しめる一品です。 マサイアソン リボッラ・ジャッラ イタリアの品種、リボッラ・ジアッラ100%のオレンジワイン。皮と梗を含めて発酵させるスキンコンタクトという製法で作られます。ぶどうのうまみが凝縮しており、同じくうまみ成分の強い料理に完璧に寄り添います。
ワインで対談 2017年9月14日 “顔と名前が一致しない”を解決するサービス「カオナビ」は人事制度をどう変革するのか – カオナビ柳橋仁機さん × セレブレイン高城幸司【後編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第2回ゲストは、株式会社カオナビ代表取締役社長・柳橋仁機さん。同社が提供するクラウド人材管理ツール「カオナビ」誕生の背景と、日本の人事の未来について伺いました。聞き手は、セレブレイン代表取締役社長・高城幸司が務めます。 第2回ゲスト:柳橋仁機さん略歴 アクセンチュア、アイスタイルを経てサイバーエージェントのジョイントベンチャー子会社立ち上げに参画。その後、独立し「社員の顔と名前が一致しないを解決する」ことをコンセプトにしたクラウド型人材管理ツール「カオナビ」をリリース。株式会社カオナビ代表取締役社長。 クライアントのニーズを満たす「お皿とお団子戦略」 高城:ここまで、カオナビが誕生した経緯や時代背景などについて伺ってきました。サイバーエージェントのお仕事をきっかけにしてアイデアを発想され、現在ではクライアントが600社にまで増えたということでしたね。ここからはさらに深いお話を伺っていきたいと思いますが、ちなみにワインとお料理はいかがですか? 柳橋:とてもおいしいです。どんどんいけちゃいますね(笑)。 高城:それは嬉しいですね(笑)。ではお話に入る前に、次のワインとお料理をどうぞ。真ダコのマリネ「セビチェ」をご用意しました。さっぱりとしていて、パプリカパウダーでアクセントをつけた料理です。合わせるワインはビリキーノ・ワインズのマルヴァジア・ビアンカ2014です。 柳橋:うーん……これは爽やかでおいしい! マリネともよく合いますね! 高城:マスカットや桃、ミントなどのアロマティックな香りが、セビチェのスパイスとぴったりですよね。 柳橋:先ほどの微発泡スパークリングもよかったですが、こちらもすばらしいです。 高城:夏らしい組み合わせを楽しんでいただきながら、お話の続きを聞かせてください。今後、カオナビとしてはどんな展開を考えられているのでしょう。 柳橋:お客さまからは、カオナビ上であんなこともこんなこともやりたいというご要望をいただいています。たとえば、評価ワークフローを出して評価結果を見たいとか、適性検査の結果を蓄積したいとか、動画研修の履歴を残したいとか。カオナビに人事マスターが入っているので、キャリアに関わる情報をそこに蓄積したいというニーズが想定以上に増えているんですね。顔写真と人事情報を管理するというベーシックな機能を「お皿」とするなら、そこに載せる新しい機能が「お団子」です。このお団子を一つひとつ用意していくのが、今後のビジネス展開になってくると思います。 高城:そういうことは創業当時から考えていたことなのですか? 柳橋:考えていました。僕は開発者なのでデータベース的な考え方が強くありまして、人事のマスター情報をベースにプラットフォーム化したほうが有利だと思っているんです。評価ワークフローとか動画研修履歴とかは人事のマスターデータに紐づくものですから、最初からそこにコミットする機能を作る必要はありません。まずはベーシックなニーズでお客さまを増やして、お団子となる機能は後から増やしていくという戦略でいこうと考えたのです。 高城:なるほど。お皿の機能を充実させつつ、お団子を用意していくと。 柳橋:ただ、お団子の部分は外部パートナーとの連携も含めて考えています。こちらが綺麗で大きなお皿を用意できれば、外部のお団子屋さんとも連携がしやすくなるのではないかと。 高城:基本的な部分をしっかり作り込むことが大事ということですね。どういうところにこだわってらっしゃるのですか? 柳橋:UIやUXにまったく違和感を覚えない世界まで持っていきたいですね。普通にクリックしたときに画面がロードしたり、ちょっと遅いと思ったり、ボタンの位置がわからなかったり……ちょっとでも引っかかりがあるのはダメなんです。何のストレスもなく使える状態にしたいですね。 高城:これまでにも相当改善を進めてこられたわけですね。 柳橋:でもまだ2割だと思っています。できることはまだまだあります。 HRテックで変わりゆく日本の人事業界 高城:それでは最後のお料理とワインです。このケイジャンスパイスチキンはこのお店の人気メニューです。炭火でじっくり揚げているので、ジューシーで柔らかいです。スパイス検定1級を持ったシェフ特製のスパイスが刺激的ですよ。 柳橋:スパイシーでおいしいですね! ふだんは辛いものが好きで、韓国料理や中華料理をよく食べるんです。 高城:そうでしたか! 今度のワインはオレンジワインです。よく合うでしょ? 柳橋:本当ですね。ロゼよりも白寄りですね。……うん、おいしい! 実は赤ワインがあまり得意ではないのですが、これはいけますね。鼻にスッと香りが抜けていきます。 高城:ではそちらを召し上がっていただきながら、今後の日本のHRテックについてお話していきましょう。HRテックを普及させるためには何が重要なのか。 柳橋:僕が創業した頃って、それこそ人事情報をインターネット上に置くのはけしからん! みたいな世界だったんですよ。それが5年間で変わったと感じているので、そこは普及してきたところかなと。 高城:たしかにそうですね。 柳橋:それから、最近は1on1のノーレイティング制度が盛り上がっています。今までは目標管理制度でカチッと目標を決めて達成度を期末に評価していたのが、期初に掲げた目標ってだいたい変わるから、その評価制度は機能しないのでは……という問題意識が出始めているのかなと思いますね。 高城:既存の人事制度にとらわれていた部分がノーレイティングで変わろうとしているのですね。カオナビはそうした動きをどう取り込んでいくのでしょう。 柳橋:ノーレイティングや1on1の機能は、何かしらの方法でカオナビ上で実現しようと決めています。それはお客さまに求められたからではなく、世の中はそうあるべきだと僕が思うからです。システム開発の世界はウォーターフォールからアジャイルに移行しました。人事評価もアジャイルであるべきなんです。 高城:そういう動きについてくる業界というと……。 柳橋:やっぱり圧倒的にIT企業が多いですよね。特にITベンチャーはだいたいGoogleさんの制度を参考にしていますよ。 高城:今後、HRテックが広がっていく中で、アメリカなんかだとすごくたくさんのプレーヤーがいるわけですよね。海外のプレーヤーが日本にも上陸し始めていて、そういう黒船の存在をどう見ていますか? 柳橋:すでにワークデイさんなんかが来ていますよね。ただ、現在日本に上陸してきているサービスは、おもに大企業向けに作られた統合型のパッケージ製品が多く、カオナビとはターゲットやサービスのコンセプトが根本的に違うので、あまり気にしていませんが、いずれにしてもアメリカでは大きな実績を持っているので、HRテックサービスの一つとして注視はしています。 高城:今後、やっていきたいことはありますか? 柳橋:僕は医者の不養生は許されないと思っていて、カオナビというサービスで働き方改革やマネジメントの効率を上げると謳っているんだから、自らもそれを実現していかないといけないと考えています。まず、今やろうと考えているのが、給与据え置きのまま1日の勤務時間を段階的に減らすこと。そのためには社員の生産性を上げるための制度や取り組みが必要で、会議を30分制にするとか、マネージャーを飛ばして役員に直接報告していいとか、いろんなやり方を変えていきたいと思っています。 高城:カオナビ自身も変革の時を迎えているわけですね。 柳橋:北欧に目を向けると、そういう会社がざらにあるんですよ。日本は一人あたりのGDPが世界20位以下なんですが、上位が北欧なんです。生産性が高くて、15時とかに帰るのに年収1千万とか普通にもらっている。一番効率的で一番成果が上がる仕事のやり方をしているんです。 高城:そうした世界を目指すのに日本の人事もHRテック、そしてカオナビで改革していかなければいけませんね。本日はありがとうございました! 柳橋:こちらこそ、おいしいワインとお料理をありがとうございました。 今回のお店 あじる亭カリフォルニア 赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワイン専門ダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類の品揃え。カリフォルニアキュイジーヌを意識した創作料理がワインと絶妙にマリアージュします。 <本日のワインと料理> 本日お出ししたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。 ポットペラのカルパッチョ 巨大マッシュルームのポットペラをカルパッチョでいただく一皿。ポットペラの独特の食感が生ハムの旨味、オリーブオイルの香りと合わさり、魅惑的な味わいを生み出しています。ポットペラはこの他に炭火焼き、フリットなどの調理法を選ぶこともできます。 ブロック・セラーズ スパークリング シュナン・ブナン ペティアン・ナチュレルという手法で作られたシュナン・ブラン100%の微発泡ワイン。フルーティーかつ爽やかな苦味がアクセントになっており、バランス良好。ビール感覚でするすると飲めてしまいます。あらゆる料理と相性が良さそうですが、今回のポットペラとはまた格別なマッチングを見せてくれます。 真ダコのマリネ「セビチェ」 真ダコをマリネしてパプリカパウダーをアクセントに加えた前菜。ぷりっとして柔らかな真ダコは食感、味わい共に絶品。添えられた野菜が彩り鮮やかで見た目にも楽しい一皿。ほのかに香るパプリカパウダーの甘酸っぱさと苦味が全体を引き締めています。 ビリキーノ・ワインズ マルヴァジア・ビアンカ2014 南イタリアの品種、マルヴァジア・ビアンカ100%で作られた白ワイン。マスカット、白桃、シトラスなどのアロマティックな香りからは、どこか東洋的な雰囲気も感じます。さっぱりとしたミネラル感もあり、スパイスを使った海の幸との相性は抜群でしょう。 ケイジャンスパイスチキン 炭火でじっくり揚げたケイジャンスパイスチキンはボリュームたっぷりで柔らかかつジューシー。スパイス検定1級のシェフがパプリカパウダー、チリパウダー、クミンパウダー、オレガノなどを配合して作った特製ケイジャンスパイスが使われています。 スクライブ シャルドネ スキン・ファーメンテッド カーネロス 白ぶどうを赤ワインの製法で作るオレンジワイン。基本的には白ワインに分類されますが、わずかに感じられるタンニンが味わいをより深く複雑なものにしています。このタンニンと豊かできれいな酸が、ケイジャンスパイスチキンの刺激的なスパイスとマリアージュします。 取材を終えて ライター・カメラマンの山田井です。カオナビの柳橋社長はまさに日本におけるHRテックの盛り上がりを肌で感じてきた人物。この日はユニークなTシャツでご出演いただき、HRテックプレーヤーとしての本音をずばりと語っていただきました。 白ワインがお好きということで、今回のワインはスパークリング、白、オレンジワインと、すべて白ワインのラインで統一。白ワインというオーダーに対してこれだけの種類をサッとそろえてくださるあじる亭カリフォルニアのすごさを垣間見ましたね……! お料理はこちらも夏らしいスパイシーなものが中心。特にケイジャンスパイスチキンは、ほどよいスパイスの辛さがオレンジワインの酸と、クリスピーで香ばしいお肉が微かに感じられるタンニンとすばらしくマッチ! 自分ではまず実現できないマリアージュです。これぞプロの技ですね。
ワインで対談 2017年9月13日 “顔と名前が一致しない”を解決する「カオナビ」は人事制度をどう変革するのか – カオナビ柳橋仁機さん × セレブレイン高城幸司 【前編】 セレブレインのコンサルタントとゲストが、ワインと料理を楽しみながら人事について本音で語り合う対談企画。第2回ゲストは、株式会社カオナビ代表取締役社長・柳橋仁機さん。同社が提供するクラウド人材管理ツール「カオナビ」誕生の背景と、日本の人事の未来について伺いました。聞き手は、セレブレイン代表取締役社長・高城幸司が務めます。 第2回ゲスト:柳橋仁機さん略歴 アクセンチュア、アイスタイルを経てサイバーエージェントのジョイントベンチャー子会社立ち上げに参画。その後、独立し「社員の顔と名前が一致しないを解決する」ことをコンセプトにしたクラウド型人材管理ツール「カオナビ」をリリース。株式会社カオナビ代表取締役社長。 カオナビはサイバーエージェントの人材データベース開発をヒントに生まれた 高城:柳橋さん、ようこそいらっしゃいました。今日はまた、おもしろいTシャツを着ていますね。 柳橋:「顔と名前が一致しない」を解決するのがカオナビのコンセプトですから(笑)。背中側にはカオナビのロゴをプリントしてあるんですよ。 高城:本当だ(笑)。これはいいですね! さて、本日はあじる亭カリフォルニアのワインと料理を召し上がっていただきつつ、カオナビ、そして日本のHRテックについて語り合いましょう。 柳橋:今日を楽しみにしていました。ワインは大好きです(笑)。飲むのはもっぱら白かスパークリングですが。 高城:そうでしたか。お酒はどれくらいのペースで飲まれるのですか? 柳橋:ほぼ毎日ですね。結婚して子どもができてからは自宅で飲むことがほとんどになりましたけど。 高城:毎日ですか! では今夜はカリフォルニアのおいしいワインをぜひ楽しんでください。ところで柳橋さんと最初にお会いしたのはいつ頃でしたっけ。 柳橋:2011年の暮れか、2012年の頭くらいだった気がします。 高城:そうそう。乃木坂のお店でアイスタイルの吉松社長からご紹介を受けたのでしたね。 柳橋:カオナビのサービスをスタートしようとしていた頃でしたね。 高城:カオナビのサービスが生まれたのはサイバーエージェントのお仕事がきっかけですよね。 柳橋:そうなんです。もともとサイバーエージェントさんから「社員の顔と名前を並べられるデータベースがほしい」という依頼があって、システムを開発しました。ですが、最初は開発した僕自身、あまり使い方をわかっていなかったんです。それでサイバーエージェントさんに聞いてみたら、社員が増えてくるとどうしても顔と名前が一致しない人が出てきて、マネジメントしにくい課題があると。他の会社さんからもそういう声を聞くことがあって、じゃあそれを軸にサービスを開発していこうと考えました。 高城:そこから現在に至って……今クライアントは何社ですか? 柳橋:今月で600社を超えました。カオナビをリリースしたのが2012年の春だから、5年ちょっとですね。 高城:我々もいろいろな場所でカオナビの名前を聞くようになってきましたよ。 柳橋:ありがとうございます。 カオナビのビジョンに時代が追いついてきた 高城:最初のお料理とワインが来ました。ポットベラという大きなマッシュルームのカルパッチョとスパークリングワインですね。これは普通のスパークリングよりは泡は控えめかな? 柳橋:これはおいしいですね! スパークリングワインは大好きなんですよ。行きつけのバーでは何かいいことがあったときに友だちとモエ・エ・シャンドンを開けるというのが恒例行事になっています。 高城:いいですね。よくハレの日ケの日なんて言いますが、ワインはハレの日のお酒ですよね。 柳橋:このポットペラ??もおいしいですね。 高城:ポットペラは巨大マッシュルームですね。あじる亭カリフォルニアではカルパッチョ、炭火焼き、フリットという3種類のお料理にしていますが、特にポットペラの旨味と食感を引き立たせるのがカルパッチョなんです。 柳橋:うん、おいしい。ワインもするするいけちゃいますね。 高城:話をカオナビに戻しますが、これだけお客さんが増えてくると、世の中への影響力を実感することもあるんじゃないですか? 柳橋:とはいっても、まだ600社ですからね。まだまだこれからです。ただ、お客さんから「これいいね」とか「使いやすいね」とか言われると、それはダイレクトに嬉しいですね。世の中にはいろいろなタイプの経営者がいると思いますが、僕は完全に開発者タイプなので、作っているものが褒められるのが一番幸せです。 高城:今、人事業界ではHRテックの領域がとても注目されていますが、カオナビはその中で一つのポジションを作っていると思います。 柳橋:それは感じますね。潮目が変わったなと感じたのは、「働き方改革」という言葉が浸透してきた去年くらいからですね。このトレンドが逆流することはないと僕は思っているんです。というのも、日本は今後人口が減ってくるわけで、一人ひとりの生産性を上げることが重要になってきます。そうなると、給与計算とか勤怠管理だけじゃなく、人のスキルや特性を把握するツールが絶対に必要になるというのは、カオナビを立ち上げた当初から主張していたことでした。 高城:カオナビのビジョンに時代が少しずつ追いついてきた感じがありますよね。 柳橋:もう一つ大きいのはリクルートから出資をして頂いたことですね。人事業界でリクルートを知らない人はいません。その企業が当社に出資してHRテック領域に進出してきたことで、HRテックの盛り上がりが本格化してきたことを確信しました。 高城:今いろいろな事例が出てきているところだと思いますが、自分が想定していなかったような使われ方などはありますか? 柳橋:想定していなかったという部分だと、僕はカオナビをマネジメントツールとして位置づけていて、一部のマネジメント層が使うものとして開発していたんですね。ところが、実際には社員全員で使っているというケースが想像以上に多かったんですよ。マネジメント層だけじゃなく、一般の社員同士であっても顔と名前を一致させたいというニーズがあったんだなと気付かされました。 高城:そういう会社って、どういう業界に多いのですか? 柳橋:サービス業が多いですね。異動や配置転換が活発な業界ですから。それから、数百人規模以上の会社。100人くらいの会社だとだいたい顔と名前が一致しますからね。 高城:なるほど。 日本におけるHRテックの盛り上がりと時を同じくして誕生し、急成長を遂げてきたカオナビ。すでに業界で確かな存在感を放っている同サービスですが、今後はどのような展開を見せていくのでしょうか。 次回、後編ではカオナビの戦略とこれからの進化の方向性をさらに深く掘り下げると共に、海外からやってくる”黒船”についてどう考えているのかなどを伺っていきます。 もちろん、ワインと料理も登場。カリフォルニアならではのユニークなワインと料理のマリアージュをお楽しみください。 今回のお店 あじる亭カリフォルニア 赤坂・赤坂見附からすぐのアメリカワイン専門ダイニング。カジュアルなワインから希少性の高いカルトワインまで200種類の品揃え。カリフォルニアキュイジーヌを意識した創作料理がワインと絶妙にマリアージュします。 <本日のワインと料理> 本日お出ししたワインと料理、そのマリアージュについてご紹介します。 ポットペラのカルパッチョ 巨大マッシュルームのポットペラをカルパッチョでいただく一皿。ポットペラの独特の食感が生ハムの旨味、オリーブオイルの香りと合わさり、魅惑的な味わいを生み出しています。ポットペラはこの他に炭火焼き、フリットなどの調理法を選ぶこともできます。 ブロック・セラーズ スパークリング シュナン・ブナン ペティアン・ナチュレルという手法で作られたシュナン・ブラン100%の微発泡ワイン。フルーティーかつ爽やかな苦味がアクセントになっており、バランス良好。ビール感覚でするすると飲めてしまいます。あらゆる料理と相性が良さそうですが、今回のポットペラとはまた格別なマッチングを見せてくれます。