コラム 2017年4月18日 戦略的採用が企業の命運を左右する―その1 人材の採用には成功パターンがないと言われている。しかしながら会社の将来にとって中核を担う人材を採用するには、従来型のパターンでは難しいのが現状である。今や採用には戦略的なアプローチが不可欠であり、その結果次第では企業の命運を左右すると言っても過言ではない。 厚生労働省が2017年1月に発表した2016年平均の有効求人倍率は前年比0.16ポイント上昇の1.36倍で、1991年の1.40倍以来25年ぶりの高水準を記録した。企業の求人数が増加する半面、有効求職者は減少している。一方雇用の先行指標とされる新規求人倍率の16年平均も2.04倍と0.24ポイント上昇し、91年以来の高水準となった。さらに併せて発表した16年12月の有効求人倍率は1.43倍で4カ月連続の上昇である。しかし、実際に企業のコアとなる人材の採用対象は、このような数字上の求職者には表れない第一線でバリバリ活躍している現職の人材なのである。 景気の良い時にはさらに成長を加速させる人材、悪い時には改革を主導し、事業を守り抜く人材など、企業は戦略的に採用したい人材のニーズは常にある。例えば、次世代経営者候補、即戦力の先端技術エンジニア、新規事業責任者などである。このような人材は、インバウンド型の待ちの採用はほとんど通用しない。例えば、新規事業責任者の募集を出しても、転職市場から自ら人材登録したり転職活動している人材が数多く応募し、書類選考や面接だけで労力を費やし、実際に採用できるケースは稀有な状況となる。 では、本当に必要な人材をピンポイントで的確に採用したい場合にはどのような方法が考えられるのか? 一つは、経営幹部自らが周辺の知り合いに声をかけて、紹介を受けるケースである。経営者は会社の事業や将来ビジョンを候補者に直接訴え、口説くことができ、さらに経営者としての人間性をアピールできれば、相性の問題もクリアでき、採用に至る確率が高いのである。一方、経営者自らが直接採用に関わった人材のケースは、後々社内的に微妙な立場となりやすいことが指摘されていることからあえて回避する企業もある。そのような場合、効果的なのがサーチ型による戦略的採用である。 市場価値の高いコア人材を採用するには、まず経営者や人事部門責任者が採用に対する固定観念を脱し、会社の事業戦略実現に向けた重要な人材採用戦略と位置づけることである。サーチに精通したコンサルタントと事業の方向性と必要な人材像を明確に定義し、候補者のキャリアビジョンとの整合性をはかるコミュニケーションプロセスが重要であることを認識することが大切である。 サーチ型採用の場合、登録型紹介採用とは、候補者の対象が全く異なる。前述の有効求職者に出現しない現役バリバリの方々を対象にリスト化するケースが多いからである。戦略的採用は、企業の経営層とサーチコンサルタントとの協働作業による周到なプロセスときめの細かいコミュニケーションが成功に導く鍵となる。
コラム 2017年4月10日 「生き残る」ための時代が求める評価基準 米国のトランプ政権発足から、世の中の動きが激しくなる予感を示唆するような論調がマスコミを賑わすようになってきました。確かに、その兆候は日本にも見られます。過去のスタンスではありえなかった安倍政権の韓国に対する強気な姿勢。あるいは民間企業の世界に目を移すと、倒産件数に占める業歴30年以上の老舗企業の割合が急増。「昔ながらの商品構成や経営が時代にマッチせず行き詰まったケースが目立つ」という(東京商工リサーチ調べ)。会社を大きく変える覚悟を経営者はもたなくてはならない時代がやってきたといえるのではないでしょうか。会社を変えるタイミングとされるのが経営トップの交代です。交代して着任する経営トップは「新しいことをやりたい」と思うもの。それが「××カラー」と呼ばれたりします。そうやって新たなカラーを打ち出そうとすると、起きるのが過去の方針の見直しであり、生じるのが過去を否定することをよしとする雰囲気です。というのも、今までと同じやり方を踏襲してうまくいったとしても、「あの人は新しいことに対する挑戦心がない」と言われてしまうからです。それゆえ、経営者は必ず、自分がトップになったのを機に自分のカラーを打ち出そうとするのです。例えば、サッカー日本代表監督が「フレッシュな選手の積極起用」を明言し、これまで活躍してきたスター選手を先発メンバーから外すと、マスコミや評論家は「自分のカラーを出そうとした」と高い評価をしがちです。周囲の評価を気にすることも相まって、トップの打ち出す「新たなカラー」は過去の否定、ないしは過去と真逆のものになるのかもしれません。