HRTech 2020年4月03日 新しい社員の早期戦力化!『オンボーディング』の勧め 日本ではまだまだ馴染みが薄く、あまり導入されていない「オンボーディング」。一方で、欧米では既に当たり前のように様々な企業に導入されています。 今回はそんな「オンボーディング」についてご紹介します。 [目次] オンボーディングとは? 具体的なツール まとめ オンボーディングとは? オンボーディングとは、企業が新しい社員を迎え入れる際に、「Day 1 Readiness デイワンレディネス(=組織の一員として入社1日目から最大のパフォーマンスを発揮できるようにすること)」を意図した「内定から入社後までの一連の受け入れ・定着プロセス」のことを指します。 例えば、新たに採用した社員がすぐに退職してしまったり、入社後なかなか配属先で活躍できないなど、そんな課題をお持ちの人事担当者の方は、オンボーディングの仕組みを構築することで、新しく迎い入れた社員の離職率の改善や早期活躍を促進することができます。 これから入社する人材に対して、伝えなくてはならない情報は意外と数多く存在します。 例えば、契約関連、人事関連、IT関連、などの手続き業務の他にも、企業が大切にしている価値観や方針の伝達、所属チームやメンバーの紹介、業務に必要な知識、オフィス周辺のランチ事情などを事前に共有することで、企業のことをより深く理解できるとともに、入社前から働くイメージを持ってもらうことができます。新しく入社する社員を歓迎し、迎い入れるための準備をしっかりと行うことで、所属する組織へ慣れ親しんでいくことやスムーズに立ち上がっていくことにつながります。 企業により必要となるプログラムは変わるかもしれませんが、小さなつまづきを防ぎ、より前向きな気持で仕事に取り組むために継続的な支援を行うことは、組織の生産性と社員のエンゲージメントを高めることにつながるのではないでしょうか。新しく入社する社員の最初の従業員体験がオンボーディングとなるのですから。 具体的なツール 日本では、入社後に集中してオリエンテーションや研修を行うケースが多いですが、新卒一括採用がなく、毎月のように新たな社員を受け入れている欧米企業では、オンボーディングプロセスを通じて個々の社員の受け入れを行っています。そのため、欧米ではプロセス管理を効率化すべくこの分野におけるツールが数多くリリースされています。 HROnboard https://hronboard.me/ 2002年設立のオーストラリア メルボルンの会社が提供しているツールです。もともとは人事コンサルティングの会社でしたが、サービス提供するうえで使いやすいツールがなかったことから自ら開発し2013年にリリースされました。2016年に100社の企業に導入され、政府やNPO、金融、病院、小売、人材など幅広い業界で利用されています。 Click boarding https://www.clickboarding.com/ 2013年設立のアメリカ ミネアポリスの会社が提供しているツールです。HRに関連する様々なツール(人事情報システム、採用管理システム、給与計算システムなど)との連携が可能です。 オンボーディングのツールは、内定時から入社後の一定期間まで継続したコミュニケーションが行われることや配属される組織やポジションなど、対象者に応じて個々にパーソナライズされていること、人事部門だけではなく現場の組織も関わることなどが特長です。毎月のように社員が入社する企業では、ペーパーレス化や自動化による業務効率化の恩恵も受けられます。内定時に必要となる標準的なタスクやフォームをテンプレート化したり、ダッシュボードや各種レポートでタスクの進捗状況を把握することで、タイムリーなフォローも可能となります。 また、これらのツールは内定時のプロセス管理に利用されるだけでなく、M&Aでの会社統合の際のタスク管理や各種ライフイベント(退職/異動/産休・育休など)のタスク管理にも活用されています。 日本でも労務管理を行うクラウドサービスが普及してきていますが、「オンボーディング」まで行うサービスはまだまだ普及していません。グローバルに事業を展開している企業では利用しているケースもでてきていますので、今後のHRテックのトレンドとして日本の企業でも導入が進んでいくのではないかと思われます。 まとめ 「オンボーディング」のツールについて導入メリットを整理すると 人事担当者のメリット:業務効率化、早期戦力化 内定者のメリット:モチベーションの向上 になります。 入社が決まった内定者の立場に立つと、入社するまでは不安と期待が入り交じった状態にいます。入社日まで特にフォローもなく、放置されていたりすると会社への不信感、モチベーションの低下にも結びつきかねません。一方で、新入社員に対して戦略的にフォローを行うことで入社後のモチベーションやパフォーマンスを最大に上げることができます。 属人的に管理し対応するのではなく、システム導入などを通じたプロセスの標準化や、内定者と迎え入れる企業の双方にとってどのようなコミュニケーションをとることがDay 1 Readinessにつながるのかをしっかりと事前に検討することで、戦略的な「オンボーディング」が実現されます。数年前と比較し、転職者が増えてきている昨今、採用にも多大なコストが発生しています。人材が不足しているとのニュースが多い中、新たに入社する人材の活躍は誰もが望むことです。今後の日本でも「オンボーディング」への理解が浸透し、構築していく企業は増えてくるのではないでしょうか。
HRTech 2019年7月15日 自律して持続的に成長をしていく組織、ラーニング・オーガニゼーションとは? ビジネスのスピードが以前とは比較できないほど早くなり、組織も常に変化や成長を求められています。組織自体も自発的に成長をしていくことができれば、会社全体の成長スピードが飛躍的に向上します。今回はそんな成長組織のコンセプトである『ラーニング・オーガニゼーション』についてご紹介します。 [目次] ラーニング・オーガニゼーションとは 5つのディシプリン ナレッジマネジメントの重要性とツール紹介 まとめ ラーニング・オーガニゼーションとは 「ラーニング・オーガニゼーション」とは、激しい変化に組織として対応していくために、個々人の自主的な学習の促進を持続的に行い、個人の自己改革・成長とともに進化していく組織のことをいいます。「自律的に持続的な変革を行っていく力を組織内に保有する」ということが特徴で、上意下達型の指示命令を行う管理組織とは異なる組織モデルになります。 「ラーニング・オーガニゼーション」はマサチューセッツ工科大学のピーター・M・センゲ教授(Peter M.Senge)により提唱された概念で、日本では「学習する組織」と呼ばれます。1990年に『The Fifth Discipline』を出版したことで、その考えは欧米を中心に大きな注目を集めて、世界中に広まりました。 ピーター・M・センゲ教授は、お互いに学び合って、システマティックなアプローチで共通のビジョン実現を目指す組織と定義しており、その実現手段として、組織に求められる5つ能力をディシプリンとしてを挙げています。 5つのディシプリン 5つのディシプリンは具体的には以下になります。 1.システム思考(Systems Thinking):ビジネスにおいて構造的相互作用を把握する力 →各メンバーが組織内でどのような役割を担っているかを相対的に把握・認識する 2.自己マスタリー(Personal Mastery):個々のメンバーが自己を高める意志を持つ →各メンバーがそれぞれ自身の能力向上に積極的に取り組んでいく 3.メンタル・モデル(Mental Models):凝り固まったものの考え方を克服する →固定観念から脱却し、従来のやり方にとらわれずに、そのときどきの環境に適応した柔軟な思考を持つ 4.ビジョンの共有(Shared Vision):個人と組織のビジョンに整合性を持たせる →メンバーと組織が目指す共通のビジョンを設定する 5.チーム学習(Team Learning):対話を行うスキルと場を養う →組織全体で高いレベルで学び合うことを重要視する 5つのディシプリンを習得・実現することによって、所属メンバーが課題や解決策を発見するための継続的な学習を行い、チーム全体で協力・柔軟に対応することにより問題解決型の組織を作ることができることを説いています。 ラーニング・オーガニゼーションを実現するためには、企業風土や組織文化を根本から変革していくことが求められるため、簡単ではありません。経営層の強い思いとリーダーシップが求められます。 ナレッジマネジメントの重要性とツール紹介 ラーニング・オーガニゼーションを実現するポイントの一つは、ナレッジ・マネジメントです。個人や組織で保有している暗黙知を形式知化して、組織全体でナレッジを共有することで学びは促進されます。 ナレッジ・マネジメントを実施するうえでの具体的なツールをひとつご紹介します。 GURU https://www.getguru.com/ 2013年に設立されたアメリカ フィラデルフィアの会社です。 顧客にはSlackやSpotifyなど今をときめくテクノロジー企業が含まれています。 彼らの調査によると、人々のワーキングタイムの20%は情報検索に費やされいているそうです。これらの時間を削減すべく、Guruはナレッジを適切に共有することにより、必要な情報を必要なタイミングで簡単に得られるようにすることをミッションに掲げています。 大きな特徴としては、AIを使うことで、人が自分で探すよりも適切な情報をGuruが提案できるようにしていることです。Slackとも連動が可能で、連携させることでSlack内でナレッジの共有を完結させることもできます。 まとめ 人は自ら学ぶことができる動物です。 ラーニング・オーガニゼーションの構築ができれば、変化の激しい現代のビジネス環境においても、他社に負けない強い組織へと自然と進化していきます。 時代や環境に合わせて、企業が進化して勝ち残っていくためには、ラーニング・オーガニゼーションの実現が競争力を左右していきます。 マネジメント
HRTech 2019年5月20日 効率的な学習を実現するマイクロラーニングとは? 様々なITツールが出現し、ビジネスのスピードは日々加速しています。優秀なビジネスパーソンには、これまで以上のスピードでより効率的にスキルを習得することが求められています。そんな昨今、若い世代を中心に活用されているマイクロラーニングについて、今回はご紹介します。 [目次] マイクロラーニングとは? マイクロラーニング用のコンテンツ制作時の注意事項 具体的なツール まとめ マイクロラーニングとは? マイクロラーニングは、従来のイーラーニングのように時間をかけて学習するのではなく、短時間で学習するスタイルのことを言います。ちょっとした隙間時間にスマホやタブレットで学習するなど、好きな時間に好きなデバイスで学習することができるのが特徴です。 以前と比べると世の中の情報量が飛躍的に増えており、現代人に求められるスキルは多岐に渡るようになってきました。そのため、情報収集や学習をいかにして効率的に行うかが、今のビジネスパーソンには求められてきています。 マイクロラーニングの学習用のコンテンツは数分くらいが中心で、長くても10分くらいです。「勉強を頑張らねばならない」というような心理的な敷居を下げ、お手軽に勉強できるに工夫されているのがマイクロラーニングです。一回が短く、しっかり完結するように作られているので、通勤時間や休憩時間、少し空いた時間に勉強することが可能となります。スマホやタブレットに慣れ親しんでいる世代には特に向いているシステムで、短い時間で繰り返し学習することができるため、反復学習がしやすく、内容の定着化にも効果を発揮します。 マイクロラーニング用のコンテンツ制作時の注意事項 マイクロラーニング用のコンテンツを制作する際、短いコンテンツが必要とはいえ、1時間などの長時間のコンテンツを単に分割すればいいというわけではありません。短くてもその時間内でしっかり完結するように制作する必要があります。連続で学習しなくても、短い時間でしっかり完結し、学ぶことができるようにすることがポイントです。従来のコンテンツでは、ストーリーを決め、専門家に依頼しコンテンツを用意する必要がありました。しかし、マイクロラーニングでは、テクノロジーの進化と共に短く簡単に、専門家でなくても気軽に作ることが可能になってきました。 これまでの、「マニュアルなどを作成し文章だけで伝える」のではなく、企業内でのナレッジ共有や、技術伝承にもこのマイクロラーニングが徐々に使われてきています。 具体的なツール そんなマイクロラーニングの具体的なツールをご紹介します。 Qstream:https://qstream.com/ 2008年設立のアメリカに本社を置く会社です。Life Science やHealth Careの分野など幅広い業界で既に利用されています。 以下にQstreamについて2分でまとめられた、動画をご紹介します。 こちらの動画では主に営業スキルの向上に使われている例が紹介されています。 スマホやタブレットを使いながら、場所を気にせずいつでも学習することが可能になっています。市場からの期待も高く、既に数十ミリオン$を調達しており、今後の展開が注目されている企業の1つです。 まとめ 料理レシピの世界でも、以前は画像とテキストのレシピが多かったのが、短時間で分かりやすく作られた料理動画などがここ数年では飛躍的に増えてきています。簡潔にビジュアル化されたコンテンツがわかりやすさと共に理解を促進しています。 その他、ブレンド型研修と言われる、集合研修とイーラーニングを組み合わせた研修などもでも事前学習や復習にマイクロラーニングのシステムが活用されてきています。 情報スピードがどんどん加速している昨今、マイクロラーニングを活用し、令和時代の優秀なビジネスパーソンを目指していきましょう。
HRTech 2018年11月09日 リアルタイムフィードバックの導入とその実現ツール 近年、従来は年次で行っていた人事評価を見直す企業が徐々に増えてきています。背景には、従来型の評価プロセスでは、ビジネススピードとの乖離が大きくなってきていることがあるようです。年次評価を見直した多くの企業では、日常を通じた人材育成の機会を重視し、良い仕事をしたときや失敗したときにタイムリーにその場で従業員にフィードバックするリアルタイムフィードバックの仕組みを取り入れています。今回はそんなリアルタイムフィードバックについてご紹介します。 [目次] リアルタイムフィードバックとは? リアルタイムフィードバックを実施するためのツール まとめ リアルタイムフィードバックとは? これまでの人事評価のあり方と違い、月に1度もしくは2週間に1度などの頻度で上司との1on1を実施し、都度フィードバックをしていくことをリアルタイムフィードバックと呼んでいます。 フィードバックの頻度が増えることにより、振り返りや改善点の認識合わせをタイムリーに行うことができるので、ビジネス環境の変化にも臨機応変に対応可能になります。また、フィードバックは時間が経ってから伝えても、記憶があいまいになるため、変えるべきところを正確に理解することが難しくなり、効果が薄まります。リアルタイムフィードバックでは、具体的な内容が頭のなかで鮮明なうちに行うことができるため、その効果が高まることもメリットのひとつです。 米国のAdobe社の行った調査では、多くの従業員は数ヶ月かけてまとめられたフィードバックを聞くより、すぐその場でのフィードバックを望んでいるとの結果がでているそうです。 出典:Adobe社 Full Study: Performance Reviews Get a Failing Gradeより抜粋 リアルタイムフィードバックを実施するためのツール フィードバックの頻度をあげるからといって、全体工数が増えてしまっては意味がありません。システムの活用などで効率的に運用していくことも導入のポイントです。そんなフィードバックを簡単に行うためのツールを提供している企業をご紹介します。 impraise https://www.impraise.com/ 2014年設立、現在ではアメリカ、オランダ、ポルトガルの3カ国で展開しているグローバル企業です。「人の成長こそがビジネスの成長(Grow your people, grow your business)」という信念のもと、Web baseでモバイルでも簡単にリアルタイムフィードバックが可能なシステムを提供しています。 デモ動画: まとめ 即時に反応がわかるSNSの普及などもすぐにフィードバックを求める人が増えている背景にはある気がします。テクノロジーの進化により、働く従業員の求める内容も変化しています。日常的な業務コミュニケーションの延長線上に評価を位置付けるなど、時代にあわせて常に変化していくことできる企業だけが、継続して成長し生き残ることができる企業なのではないでしょうか。
HRTech 2018年10月14日 退職防止にも効果的!オンボーディングでスムーズな「Yes to Desk」を実現する 以前、オンボーディングについてご紹介しましたが(新しい社員の早期戦力化!『オンボーディング』の勧め)、おかげさまで日々沢山の方々にアクセス頂いています。人材不足が騒がれている昨今、新しく入社する社員の早期戦力化はどこの企業でも重要度が上がってきています。今回はそんなオンボーディングについて、改めてアメリカの状況なども含めご紹介します。 [目次] アメリカでのオンボーディングの状況 「Yes to Desk」とは オンボーディング実施のためのツール紹介 まとめ アメリカでのオンボーディングの状況 アメリカでは2018年現在、失業率は過去最低水準に達しています。そのため、新しい人材の確保にはどこの会社も苦労しており、多くのコストをかけて採用した新たな社員に1日も早く会社にフィットしてそのパフォーマンスを発揮してもらうために、「オンボーディング」は企業における戦略的な取り組みとして上位に上がってきています。 誰にとっても最初の印象はとても重要です。しっかりとしたオンボーディングプログラムを提供することによって、受け入れた社員が長い間活躍してくれることが期待されます。実際に体系化された優れたオンボーディングプログラムを提供している企業では、新たに採用した社員が、3年というスパンで考えると継続して働き続ける率が69%も高いと言われています。また一方では、退職者の20%は45日以内に発生するというデータもあり、こういった数値を改善する手段こそがオンボーディングとなります。 また、オンボーディングの従業員に与える影響も大きくなってきており、退職する人たちの15%の人たちが、不適切なオンボーディングプログラムを退職理由にあげています。 つまり、アメリカではオンボーディングは早期戦力化の施策であるとともに、退職防止の施策としても重要な位置づけになってきています。 「Yes to Desk」とは そんななか、アメリカでは「Yes to Desk」という概念が新たにでてきています。 採用のオファーに対して「はい」と言ってから、実際に入社日に「デスク」に到着するまでの間をいかに生産的で従業員に歓迎されるようにするべきか、という考え方です。 オファーを受けいれた瞬間からオンボーディングプログラムは始まっているのです。 もともとはTwitter社の取組みなどから生まれた概念で、オファーを受け入れた瞬間から複数の関係する事業部が75ステップの「Yes to Desk」プロセスを実施していることからきているようです。ゴールは至ってシンプルで、座席の手配やメールアドレス、会社のミッションやビジョンの効果的な伝達、バーチャルオフィスツアー、幹部社員との交流機会、期待する業務内容などの迎え入れ方に関するアクションを漏れなく明確化させ、入社時の最初の印象をよくすることにあります。 オンボーディング実施のためのツール紹介 そんなオンボーディングを実現するための新たなツールをご紹介します。 https://enboarder.com/ 2015年に設立されたオーストラリアの企業 Enboarderは、単なるタスク、フォーム、書類作成などの効率化を支援するだけではなく、入社時における従業員経験とエンゲージメントに焦点を当てたオンボードとエンゲージメントのプラットフォームです。 まとめ これまでオンボーディング構築の効果は、早期戦力化に重きを置かれていました。しかし、今回ご紹介したようにアメリカでは退職やその後の在籍率にも影響していることがわかってきています。もし、自社の退職率が高い場合は「Yes to Desk」を含めたオンボーディングを一度見直してみてはいかがでしょうか。 セレブレイン社では、新入社員早期戦力化のためのロードマップ作り、メンタリング(バディ、メンター制度)、1on1の仕組みづくりなどを支援しています。お悩み事などありましたらば、お気軽にご相談ください。 お問い合わせはこちら:https://www.celebrain.com/inquiry
HRTech 2018年9月30日 2018 HR Technology Conference & Expositionピッチコンテストファイナリストの6社はどんな企業? ラスベガスで開催され、今年で21回目を迎えた「HR Technology Conference & Exposition」。速報の第一弾をセレブレイン社の人事・組織に役立つコラムのコーナーでもご紹介しましたが(現地レポート! 2018年のHR Technology Conference & Exposition in Las Vegas (第1回))、今回はそちらで実施されていたピッチコンテストについてより詳細をご紹介します。 [目次] HR Technology Conference & Exposition ピッチコンテストとは ファイナリスト6社 最後に HR Technology Conference & Exposition ピッチコンテストとは http://www.hrtechnologyconference.com/pitchfest.html 「Pitchfest」と呼ばれるこのコンテストでは、HRTechのスタートアップ企業に対して、人事責任者、投資家、ITプロフェッショナルを含むカンファレンスの参加者に、自社のサービスやテクノロジーを紹介する機会が与えられます。今年は、150社以上の参加企業から絞り込まれた30社がピッチコンテストに参加しました。 まずは予選ラウンドです。予選ラウンドでは参加企業は10社ずつ3つのグループに分けられた上で、各企業は3分間のプレゼンテーションを行います。審査は観客の投票を含んで行われ、各グループから2社ずつ選出され、6社に絞られます。そして、選ばれた6社により再度5分間のプレゼンテーションが行われ、審査員による厳正な審査のもと優勝企業が決まります。 優勝企業には、会期中に行われる「The Next Great HR Tech Company」に登壇する権利と、2019 HR Technologyカンファレンスで展示スペースなどが提供されます。 ファイナリスト6社 今回予選を通過した6社のファイナリストは次の通りです。 1.Blendoor http://blendoor.com AIを活用して、採用の際に性別や人種などによる偏見を排除して、多様な才能を持つ人財を採用することができるシステムを提供しています。最近では履歴書や職務経歴を分析するピープルアナリティクスなどのテクノロジーも提供開始しています。 2.ComplianceHR http://compliancehr.com 企業に求められる人事上のコンプライアンス管理をAIを活用して解決するテクノロジーを提供しています。 3.Jane.ai https://jane.ai AIを活用したチャットボットを提供しています。人部部門、IT部門、セールス、カスタマーサポートなど様々な部門で利用可能です。 4.RelishCareers https://www.relishcareers.com 修士卒業レベルに特化した人材採用プラットフォームを提供しています。 5.SwarmVision https://www.swarmvision.com 自社内からイノベーション人材を発掘/育成するためのプラットフォームを提供しています。 6.Talvista https://www.talvista.com データ・ドリブンでの採用プロセスを可能とするプラットフォームを提供しています。ジョブディスクリプションや面接評価なども最適化していくことができます。 優勝したのは、AIを活用した採用ソリューションを展開しているBlendoor。女性のCEO兼ファウンダーがとてもエキサイティングなピッチを展開し、会場を盛り上げていたのが印象的でした。 最後に このピッチコンテストは、EXPO会場の真ん中あたり、開かれた場で実施されており、会場にいる人は誰でも聞くことができました。 座席数は30〜40位でしたが、立ち見の方々も多く、全部で70〜80人くらいが聴講していました。そのため、よくあるピッチコンテストよりもカジュアルな雰囲気で、ピッチをする方も、ピッチを聞く方もまさに楽しんでいる!というのが特徴的でした。 この中から次のHRユニコーン企業がでてくるのか? HRTech先進国のアメリカの最新情報は常にキャッチしておきたいところですね。
HRTech 2018年7月01日 今更聞けない人事の重要ワード、会社と従業員の関係を定義する「エンゲージメント」とは? 近年、人事の業界ではエンゲージメントという言葉をよく耳にします。しかし、その言葉の意味については意外と整理されていないのが実情です。今回は改めて『エンゲージメント』についてご紹介します。 [目次] エンゲージメントとは? なぜ重要視されているのか? 具体的なサービス まとめ エンゲージメントとは? 従業員の仕事や会社に対する考え・状態を表す言葉として、様々な言葉があります。例えば、モチベーション、従業員満足度、コミットメント、など。普段、混同して使われがちですが、実はそれぞれ意味が異なります。 「モチベーション」は従業員のやる気を意味しています。会社に対してというよりも、仕事に対して個人の中に内在する動機付け要因と捉えてもいいかもしれません。目標に向かって進む際の内的なエネルギーとなりますが、会社と従業員の方向性があっていることが大事なことです。 「従業員満足」は会社に対する従業員の満足度を意味しています。顧客満足度を高めるためには、まず従業員満足度を高めることが重要である、との考えのもとで取組みの推進が行われました。ただし、従業員が満足するためには会社がどのような環境を提供すればよいのか?といった、会社から社員に対する一方向の関係に向かいやすい傾向があります。 「コミットメント」は約束や責任のことを意味しています。矢印は社員から会社に向いており、所属している会社に対して全うすべき責務として捉えられます。 そして、「エンゲージメント」は会社と従業員の間におけるつながりの強さを表しており、従業員が自発的に持つ思い入れや貢献意欲のことを意味しています。矢印も従業員と会社における双方向の概念で表現されます。 なぜ重要視されているのか? これまでは、モチベーションや従業員満足度を向上させることが会社の業績向上に結びつくという考えのもと、社員向けにサーベイや人事施策が行われることが多くありました。 しかし、最近ではそれらの内容に関して見直しを始める企業がでてきました。例えば、従業員満足は言い換えると「居心地の良さ」にも繫がる部分もあり、必ずしも業績向上へと結びつくものではないと考えられ始めています。 そんななか、いくつかの研究により「従業員エンゲージメント」の向上と業績向上には強い関係が示され、近年注目されるようになってきました。 この従業員エンゲージメントという概念は、日本ではまだまだ馴染みの薄い概念です。 アメリカの調査会社ギャラップ社が2017年に発表した従業員エンゲージメントに関する調査では、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかいないという結果でした。参考までにアメリカは31%。その他の国と比較しても大きく乖離がでています。 ※調査結果はこちらから確認できます。 この調査結果からは、階層的なリーダーシップが強い半面、マネージャーがコーチングのような従業員の強みや・自主性を引き出すことが難しい状態であることや、日本独特の雇用制度や就業文化に基づいた組織中心の考え方が、逆に従業員の意欲を下げていることが伺えます。まだ日本企業では、従業員エンゲージメントを重視した経営が浸透していないことも要因と考えられますが、企業と従業員の間で強い信頼関係を築き、高い貢献意欲を醸成するためには、もっと個々の従業員のニーズや欲求に応える従業員中心の経営に移行する必要があるのかもしれません。 具体的なサービス そんなエンゲージメントを定点観測をするためのツールをご紹介します。 Glint https://www.glintinc.com/ 2013年創業のアメリカ・カルフォルニアの会社です。 ミッションは、「Our mission is to help people be happier and more successful at work.(人々が職場でより成功、より幸せになる手助けをする)」。 組織の健康状態と表してエンゲージメントの状態を可視化し、どんなアクションをするべきかなどのインサイトを提供します。 数百名から数万名規模の会社まで、大小様々な企業が利用しています。 市場の期待も大きく、2016年には$27Mの追加調達をしています。 まとめ ギャラップ社の調査結果でも分かるように、まだまだ日本では浸透しているとはいえない「エンゲージメント」という概念。しかし、自発的に貢献する意欲の高い社員が増えることで一人ひとりのパフォーマンスが向上し、それが最終的に組織力の強化につながっていくということは想像できます。 労働人口が減っていく現在、優秀な人材の確保は企業の重要課題にますますなっていきます。退職者を減らし、熱意を持って働く人を増やすためにも、まずは社員の現状を把握するためのエンゲージメント・サーベイを定点的に行い、そしてPDCAを回すことからスタートしてみてはいかがでしょうか。
HRTech 2018年5月28日 欧米の大手企業が導入する新しい評価制度ノーレイティングとは? 年度初めに目標を立案し、その目標の難易度や達成度に応じて人事評価をする。多くの日本の企業が実施してきた従来の方法が機能しなくなってきています。 そんななか欧米の企業を中心に導入が進んでいる「ノーレイティング」。今回は「ノーレイティング」についてご紹介します。 [目次] ノーレイティングとは 背景 具体的なツール まとめ ノーレイティングとは ノーレイティングとは、これまで行っていたスタックランキング制度(成績をA、Bなど全体からの相対評価でランキングをだす制度)は行わず、継続的かつリアルタイムにフィードバックを行う仕組みのなかで、上司が部下のパフォーマンスをマネジメントする人事評価の仕組みのことをいいます。 背景 近年、従来型の人事評価制度(年度初めに目標をたて、その実績に応じて、年度末にS,A、B、C、Dなどのランク付けを行って評価を行う)には大きく以下3つの課題がでてきました。 1. ビジネススピードが速くなり、目標達成サイクルとの乖離が発生してきた 2. スタックランキング制度は個人間の競争は生み出すが、チームワークや周囲とのコラボレーションは生まれにくい 3. 年度末に膨大な評価のための時間(手続きやドキュメントなどの準備)が必要とされる一方、評価をつけることが目的となり、形骸化してきている 従来、人事評価は賞与の決定や優秀な社員の昇格などを行うために活用されてきましたが、従来型の制度では時代の流れとともに、人材不足が進む中で優れた社員のエンゲージメントを高め、会社全体のパフォーマンスを上げるという本来の目的に対して機能しづらくなってきています。 こうしたなか、「ノーレイティング」という考え方が2012年ごろから欧米を中心に広がりをみせています。 ノーレイティングでは、月に1度などの頻度で定期的に主にマネージャーとメンバーとの間で1on1ミーティングを行います。メンバーのそれぞれの活動に対して、評価ではなく行動改善や成長につながるフィードバックをリアルタイムに行っていくことにより、業績向上に導いていきます。こちらの記事にも記載していますが、適切なタイミングでフィードバックを行うことは、効果を発揮するうえで非常に大切です。そして、必要に応じて目標も変化させていくことで、変化の激しいビジネス環境への対応も可能となります。 従来型の人事評価が、評価の目的を人材の査定に置いているのに対して、ノーレイティングでは人材育成を目的にしている点も特徴としてあげられます。 具体的なツール ノーレイティングを実施するためには、継続的かつリアルタイムにフィードバックを行う必要があるため、それらを管理するツールが欧米では活用されています。 Engagedly https://engagedly.com セントルイスに本社を構えるアメリカの会社です。 彼らの提供するプラットフォーム Engadedlyは、目標設定、マネージャーフィードバックの管理、ナレッジシェアなど、ノーレイティングを実施するための機能が含まれています。 2016年にはアメリカのHRTECHに関するメディア「HRTECH OUTLOOK」にて、Top10 HR Cloud に選ばれ、現在では中小から大手まで様々な規模の企業に利用されている注目の製品です。 まとめ 相対評価を可視化したスタックランキング制度は個人の競争を促すことを中心にマネジメントをしていたころは有効でしたが、チームワークを生みづらく、オープンイノベーションの考え方に代表されるような共創の時代には向いていないかもしれません。 ノーレイティングを実施する際に重要となってくるのがマネージャーのマネジメントスキルです。メンバーとのコミュニケーション機会が増えるため、マネージャーにとっては工数が単純に減るわけではありません。効果的な1on1を実施できるかどうかにより、メンバーの成長度合いや評価に対する納得度も大きく変化するため、より高度なスキルが求められます。 今後の企業戦略において、マネージャーであるミドル層のスキルや資質はより一層重要になってくるのではないでしょうか。
HRTech 2018年4月16日 採用活動にもテクノロジーを!採用チャットボットを活用した初期スクリーニングの実現 タレントプールや次世代型適性検査など、HRTechの利用はリクルーティングにも広がりをみせています。リクルーティング活動におけるHRTechとして、今回は採用チャットボットをご紹介します。 [目次] 採用チャットボットとは? メリット 活用事例 まとめ 採用チャットボットとは? AIを活用したシステムを介して、メールやSNS、メッセージングアプリなどで応募者とのやりとりができるシステムのことを採用チャットボットといいます。 チャットボットは顧客サポートの領域では徐々に利用が進んできています。それをリクルーティングのプロセスにおいて活用しているのが採用チャットボットです。 リクルーティングの流れは、大きく以下の4つに分類されます。 1. 採用の告知 2. 応募者の募集 3. スクリーニング(一次選考) 4. インタビュー設定 2、3、4のプロセスでは、通常は応募者とのやりとりを採用担当者がマンパワーをかけておこなっています。人に近いユーザーインターフェースを用意することで、これらの業務を可能なかぎり自動化するのが採用チャットボットです。 メリット 採用チャットボットを活用することで、応募者からの質疑応答対応の自動化とともに、やりとりを通じて応募者の経験やスキルレベルを取得することができるため、スクリーニングまで実施することができます。 これまでは、人材を大量採用するときは、セミナーを開催し、N:1のやり取りを経てインタビューまでの絞り込みをしていました。しかし、これらの業務を工数をかけることなく1:1のコミュニケーションを行い、やり取りのログなども残しデータを収集することで、採用プロセスを効率化・スピードアップさせることができます。さらに応募者の満足度向上やデータ分析など新たな価値の創造も期待されています。 活用事例 アメリカでは、陸軍の採用活動にこの採用チャットボットは活用されています。 ASK SGT STAR https://www.goarmy.com/ask-sgt-star.html こちらのバーチャルガイドに様々な質問をすることができます。 「Launch SGT STAR」をクリックするとチャットボットが出現します。 こちらに質問を入力すると即座に返信がきます。 「How do I apply? (どうやって申し込みすればいいですか?)」のような適切な質問に対してはWEBサイト自体も反応し、適したサイトへ切り替わります。 このようにして、サイト訪問者を適切なページに誘導し情報提供を自動化しています。 まとめ これまで、リクルーティング用のシステムとしては、ATS(Applicant Tracking System 応募者管理システム)が多くの企業に導入されてきました。 しかし、ATSはプロセス管理のツールであり、応募者とのやりとり自体は人手を介して行う必要があります。 AIやビッグデータの台頭で人とのコミュニケーションの部分までがテクノロジーで代替する時代がきています。今回ご紹介した採用チャットボットは、これからの採用活動のイノベーションとして大きな転換期になっていく可能性もあるのではないかと考えられます。
HRTech 2018年4月03日 AI時代の人事に欠かせない『ピープルアナリティクス』とは? テクノロジーの進化、特にビッグデータとAIの組み合わせは、これまで「人」がしていた仕事の概念そのものを変えようとしています。 人事の仕事についてもその変化が訪れています。今回はそんなビッグデータとAIを活用するピープルアナリティクスについてご紹介します。 目次 ピープルアナリティクスとは ピープルアナリティクスの導入と活用 具体的なツール 今後の人事に求められること ピープルアナリティクスとは ピープルアナリティクスとは、企業内に蓄積されている従業員データを収集・分析し、人事の施策(採用、人材配置、組織力の強化など)に役立てる取り組みをいいます。ビッグデータ解析や機会学習技術の発達とともに、ここ1、2年でピープルアナリティクスは大きな広がりをみせています。 企業内には大量の人事データが眠っています。 具体的には、給与や賞与、退職金、人事評価結果、フィードバック、1on1、教育研修実績、福利厚生の利用内容、退職実績・事由、休暇取得、出退勤時刻、残業時間、など。 これらの社内にある膨大な情報を有機的に結びつけ分析することで、「自社/自組織のパフォーマンスに大きな影響を与える要因は何か?」、「短期間で辞めてしまう社員にはどのような特徴があるのか?」などの今までは特定が難しかったことに対してデータからアプローチすることができるようになります。既に自社に合う人材の採用や離職率の低減などの施策に活用する企業もでてきており、これからはピープルアナリティクスを活用した経営課題の解決や予測に基づく人事施策を行うことは特別なことではなくなっていくのかもしれません。 これまでは、人材に関してはデータ化してもその特徴をつかむことが簡単ではなかったこともあり、経験や勘、前例に基づいて「こんな感じの人が活躍しそうだ」「あいつが退職しそうだ」などと判断していることが多くありました。しかし、ピープルアナリティクスの導入により、経験や勘ではなく、ファクトに基づく確かな判断が可能になるのです。 ピープルアナリティクスの導入と活用 では、どのようなステップで導入していくべきでしょうか。導入ステップとしてABCDで考えるとスムーズに進みます。 (ピープルアナリティクスのABCD) 情報がデータ化されていなければ、ピープルアナリティクスを実施することはできません。自社のステージを把握し、適切なステップで導入していくことをお勧めします。 導入後はピープルアナリティクスで得られる情報をどのように活用していくかが重要になります。 「今あるデータをベースに未来を予測」することで、経験や勘とは違う効率的かつ効果的な人事アクションの実施につなげることができます。 具体的なツール ピープルアナリティクスのツールとして、海外では「Visier」が台頭してきています。 Visier https://www.visier.com 2010年にSAP, Business Objects, Crystal Decisions, OracleなどのBI(Business Intelligence )業界出身の方々が設立したカナダ バンクーバーの会社です。 既に世界中で120社を超える大手企業が利用しており、クラウド上には300万人分を超えるデータが蓄積されています。 topページの「Goodbye Reports. Hello Insights.」に彼らのコンセプトが非常に分かりやすく表現されています。レポート自体には価値はなく、次の施策に結びつける「洞察」をツールとして提供することを目指しています。 今後の人事に求められること 2018年3月24日の日経新聞に銀行の大量採用が終わりを迎えるという記事が掲載されていました。 メガ銀、大量採用に幕 その中の「人材を無駄づかいしてきた面は多分にある」というコメントが非常に印象的でした。有力大卒の人材をまとめて囲い込みながらも、事務作業などの比較的単純な作業に労力を割くウエートが大きいという意味でした。 事務的な仕事はどんどんコンピュータに置き換わり、人の仕事が再定義されてきています。 ピープルアナリティクスが浸透していくことにより、データから出てくる情報をもとに「どう判断するか」「どう施策に反映させるか」が、より一層重要になってくるのは間違いありません。 これからの人事には、データや数値の持つ意味を読み解き、経営のビジネスパートナーとして、戦略的な提言を行う人事部門に変化することが求められています。